オススメ本紹介 2011

永井オススメ!

作家と温泉

  • 2月2日 up
  • 草なぎ洋平編
  • 出版社:河出書房新社
  • 価格:1,785円(本体1,700円+税)

文学には、温泉がよく似合う。

日本文学史に残る名作は、温泉から生まれた。 といっても過言ではないと思いたくなるほど、作家と温泉との縁は深い。

ノーベル文学賞作家・川端康成の代表作『伊豆の踊り子』『雪国』は、 ともに温泉地が舞台であり、夏目漱石『坊っちゃん』にも温泉に浸かる場面がある。 志賀直哉「城の崎にて」は温泉地そのものが題名になっているし、 「蒲団」の自然主義作家・田山花袋は、そのままズバリ『温泉めぐり』というルポを書いている。

なぜこれほど文学作品に温泉が登場するのかといえば、作家たちが温泉を訪れるからである。 すなわち作家という人種、ムズカシイ顔をしているわりには、かなり温泉好きなのである。

文豪、文士とてそこは人の子、執筆のために温泉にやって来て、 執筆だけして温泉に入らない、などということはあるはずもなく、 ひとたびお湯に浸かれば心身ともにほぐれ、気持ちも顔もゆるむというもの。 本書には、その決定的瞬間をとらえた、先生方の入浴写真が多数収録されている。

温泉によって、日々の苦悩鬱屈、感情のもつれほつれ、 その他もろもろから解放され、ゆるゆるになって忘我の境地に至ったとき、 のちに名作として結実する文学作品のアイデアがひらめくのかもしれない。 そのおかげで今、我々が傑作の数々を享受できるのだとしたら、 これにまさる温泉の効能はないだろう。

いい湯は、創作の源泉なのだ。