税込価格:1980円
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内容詳細

神の栄光とは、人を完全に生かすことである
神がわたしたちに望んでおられることは、罪を恐れて萎縮したり、罪責感に悩まされながら生きることではない。贖われた心をもって「望みに向かって」人生を生きることである。どうしたら、そのような人生を生きることが出来るのか。悩める現代アメリカでベストセラーになった福音の書!!

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書評

心の回復をめざして

J・エルドリッジ著

宮原守男、木下教子訳

目を醒ませ、死者の中から

神の栄光、完全に生きるあなたの心

 

船本弘毅

 「自分の人生を生きていくこと。これほど大切なことはない」という言葉で始まる本書は、アメリカのコロラド・スプリングスの豊かな自然の中に住み、人々の心を回復し、人々が心から生きるようになるために活動しているジョン・エルドリッジによって書かれたキリスト教入門書である。そこに用いられ、引用されているものの多様さと、その大胆な理解と分析には目を見張らされるものがあり、極めてユニークな信仰と人生への導きの書であると言える。

 二〇一一年三月一一日に東日本を襲った巨大地震・大津波・福島第一原発の事故は、想像を絶する深刻な被害をもたらし、その後引き続いて起きている様々な自然災害、異常気象、さらに経済不況などは、日本人の生活と思想に大きな影響を与えている。多くの言葉が語られたが、反って、ことばへの不信、人間への不信、信頼感の喪失、さらに宗教への不信といった社会現象を生み出していると言っても過言ではない。

 そのような状況にあるわたしたちに対して、エルドリッジは本書を通して、率直に、信仰は頭脳の問題ではなく、心の問題であることを訴え、真の生命を得るために、物語やおとぎ話や神話や映画などにも耳を傾け、それを現実の生活の中で確認することによって、信じて生きる者になることが出来ると主張する。なぜなら、物事は目に見えるままではなく、戦いは進行中であり、わたしたちは果たすべき重大な役割を担っているからだと言う。そして人生において最も大切なことは、神を愛することと、人を愛することだと語るのである。

 本書は四部から成っている。第一部は「はっきりと、道を見よ」、第二部は「あがなわれた心(ハート)」、第三部は「四つの流れ」、第四部は「心(ハート)の道」であり、最後に「自由に向かうための日々の祈り」が付加されている。

 中心をなすのは第三部であり、「エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた」(創二・一〇)を引いて、キリストもわたしたちのために、「四つの流れ」を贈って下さった。わたしたちに求められていることは、第一に神と共に歩むこと、第二に神から親密な助言と指導を受けること、第三に測り知れぬほど恵み深い回復を受けること、第四に霊の戦い、すなわち心(ハート)のために戦うことであると述べ、この四つの流れが心(ハート)の解放において一つになると主張している。そのためには、心の内に聴こえて来る神の声に耳を澄ませ、神に絶えず祈り求め、イエスによる回復を追究し、イエスに立ち帰ることによって、試練や誘惑に立ち向かうよう勧めるのである。

 共に道を歩む仲間は必ずしも多くないとしても、それは幸いなる少数者である。スコットランドの西にあるアイオナの小島の岩の上に座してひたすら祈った聖コルンバが、心の一致した小さい共同体を形成して、ヨーロッパ伝道の拠点としたことに倣って生きることを勧め、「主なるイエス様。今、私は、あなたのもとへ参ります。……私が今日、絶対に必要としている恵みと憐れみのすべてを、あなたから頂くために」という言葉で始まる祈りで、本書は閉じられている。

 最後に本書の訳者について述べねばならないであろう。木下教子氏は、弁護士一家に育ち、人間科学を専攻した方であり、その翻訳原稿と原著を精読して詳細な注をつけたのは弁護士の宮原守男氏である。この異色の共訳者の協力によって、新しい形のキリスト教入門書、豊かな心の糧となる書が、今世に出ることは時宜にかなったことであり、広く読まれることを願って止まない。

(ふなもと・ひろき=元東京女子大学学長)

(四六判・四三四頁・定価一八九〇円〔税込〕・教文館)

『本のひろば』(2012年11月号)より