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内容詳細

だれが伝道を担うのか?

教会の100年後を見据えた神学的・実践的な「日本伝道論」全3巻。牧師と信徒が「伝道」についてともに考えるための最良の手引き。最終巻では、牧師と信徒の役割とともに、教会の一致や教団形成のあり方を考える。

「『伝道』とは、三位一体の神の喜びに満ちた救いの命がこの世の津々浦々にまで伝達・媒介され、そこに三位一体の神を信じ、その御名をほめたたえ、礼拝する教会が形成されてゆくことです。伝道と喜び・喜びと伝道。この二つは不可分です。そのことを特に日本の地で展開するあり方について考察することが、本シリーズの中心的な主題です。」(本文より)

【目次】

はじめに

第1章 教会と世界を形成する神の言・キリスト

第1節 教会の内・外で働く神の言・キリスト
第2節 神の言葉とは何か
1 神の言葉の三つの形態
2 神の言葉の本質
3 聖書はなぜ神の言葉と言えるのか
4 教会の宣教はなぜ神の言葉と言えるのか
第3節 キリストを証しし、教会を形成する聖霊
1 聖霊を求める祈りの必要性
2 どの教会の礼拝にも聖霊が働いておられること
3 聖霊はキリストと共に、教会形成のために教会の内・外で働く
第4節 聖礼典について
1 聖礼典とは何か
2 洗礼について
3 聖餐について

第2章 牧師の召命と任務

第1節 牧師職への召命
1 イエス・キリストからの召命
2 部分教会からの委託
3 牧師と教会との関係
第2節 説教を語る務め
1 説教の目的は「説得」であるということについて
2 神について語ろうとする時、どのようなずれが起こり得るのか
3 説教の心臓部である「神の名による宣言」について
4 聖書からどのようにして「神の名による宣言」を読み取るのか
5 説教の作成
6 説教者の成長と説教壇の改善に向けて

第3章 信徒の務め

第1節 教会の主キリストとその御体なる教会
第2節 伝道する教会となるための自伝・自立・自給の精神について
1 日本における最もオリジナルな教会形成の理念
2 万人祭司主義について
3 教会の自伝・自立(自律)・自給とは何か
第3節 伝道する教会の形成
1 礼拝について
2 奉仕について
3 交わりについて
4 証しについて
第4章 日本における教会形成と伝道
第1節 「世界教会」の理念と形成
1 聖・一・公同の・使徒的教会の理念
2 教会における伝統形成と再統合について
3 歴史的回顧
4 世界教会の協力と一致の唯一の基礎は聖書正典である
第2節 日本におけるプロテスタント教会の形成と伝道
1 日本基督教団の特質と使命
2 日本伝道の将来

おわりに

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書評

私たちは「いかに」伝道するのか?

小泉 健

 日本の伝道を考える際に、どのような筋道で考えることができるでしょうか。わたしたちが伝道に困難を感じ、教勢が停滞し、教会が力をなくしていることはたしかです。危機感を共有することが必要です。ただしかし、危機は生々しく語られるのに、それを打開する言葉が後に続かないのです。

 神学の中に「宣教論」という分野があります。もともとは、キリスト教国から伝道地へと出かけていった宣教師たちが、外国伝道の経験を持ち帰り、反省することから生まれたものです。伝道地において、イエス・キリストの名を知らない人々に福音を伝えるとはどういうことかを、新しく考えさせられたのです。こうした宣教論においては、たとえば、神の宣教を土台にしつつ、「出会い」「対話」「共生」が論じられます。他の宗教との関係、福音と文化のかかわりが取り上げられ、「土着化」「文脈化」「文化的受肉」が考察されます。

 日本はなお伝道地ですし、著者は四十年以上にわたる日本伝道の取り組みを土台として本シリーズを書いておられます。その意味では、いわゆる宣教論と同じところから出発しているとも言えます。しかし本シリーズは、右に述べたような宣教論に連なるものではありません。むしろ「日本における『宣教学』という学問分野を構築することを試みようと」(第一巻、七頁)するものであり、「日本といういわゆる『伝道途上国』での伝道を〈組織神学的〉に基礎から考える」(同、七―八頁)ものなのです。ここに、本シリーズの性格が明確に言い表されています。

 土台にあるのは、教義学全体を「伝道の神学」として把握し直そうとする姿勢です。実際の論述にあたっては、教義学全体に触れることはできませんから、どこに力点を置くかに特色が現れることになります。「何を」伝えるのかを語る第二巻では、伝道の根拠としての「神の恵みの選び」と、喜ばしい知らせの核心である「罪の赦しの福音」が語られたのでした。

 最終巻となる本書は、いよいよ「いかに」伝道すべきかを扱います。その最初に「神の言葉」論が展開されるのは、読者の意表をつくものであり、本書のいちじるしい特色を示す部分だと言えるでしょう。伝道し、救いの言葉をお語りくださるのはキリストです。そしてキリストは神の言葉そのものであられます。この神の言葉を、今ここでの言葉として語らせ、神の言葉への応答を引き起こし、教会をお建てになるのが聖霊です。ですから、キリストの現臨と救済行為が、何によって、どのように担われるのか、わたしたちがそのことにどのように仕えることができるのかを明らかにすることが重要になるわけです。

 こうした神の言葉論を土台として、神の言葉に仕える牧師と信徒の務めが具体的に語られます。牧師が神の言葉に仕えるのは、なんと言っても説教の奉仕です。ここでは、筆者の説教者としての経験に基づいて、かなり具体的な方法が語られます。二つの「ずれ」の問題、「十五字の言葉」を書くことなど、説教者はさまざまな刺激を受け、自分自身の実践を振り返る手がかりを得ることになります。

 信徒の務めが語られる際に中心的な原理とされているのが「万人祭司」主義です。このことはすでに第一巻で、韓国の教会の強さを語る際にも述べられていました。一人一人の信徒が御言葉に聞き、御言葉に従う者となり、教会を形成する主体となること。ここに教会の力、伝道の力があります。著者は、万人祭司の実質化こそが、具体的に展開されるべき伝道方策だと考えているように思われます。

 すでに明らかなように、本書の伝道論は、教会が教会として建てられることこそが真の伝道であるというものです。これこそ日本の教会が追い求めてきたことであり、今なお課題としていることです。古くて新しい日本伝道論が、ここに読みやすく堅実な形にまとめられて提示されています。

(こいずみ・けん=東京神学大学准教授)

『本のひろば』(2015年11月号)より