「わたしの本を積んでくださって、ありがとう!」
6年前、お店で元気よく声をかけてくれたヤッコさん。
ファッション誌やCMでしょちゅうお見かけする
「スタイリスト・高橋靖子」と記されたポップな名刺を差し出されて
「あっ、あのヤッコさんなんだ!!」とびっくり。
『表参道のヤッコさん』が文庫になりましたよ!
今の表参道も好きだけど、
この本を読むと「いいよなぁ、60~70年代。」って羨ましいことこのうえない。
ユニークな若きヒトビトが集まり、お金はないけど時間はある!と自分たちの夢に向かって
みんながそれはそれは一生懸命でひたむきに走っていた時代。
「ヘンなものを面白がるアウトロー」に見られていた人たちが生み出したものが
時代の先端となり人々の羨望の対象になった、あのとき。
右も左もわからずに飛び込んだファッションの世界、
「スタイリスト」なんていう名称もなかった時代に
ヤッコさんは持ち前のセンスとアイデアで仕事を楽しくするため、
人に喜んでもらうため、労を惜しまない日々を送る。
ほとんどが体当たり的な無謀な行動!
それでもヤッコさんの情熱と人柄に周囲は魅了されていく。
デヴィッド・ボウイ、マーク・ボラン、山本寛斎、ユージン・スミス、
伊丹十三、細江英公、鋤田正義・・・、
キラ星のごとく魅力的な人物たちとヤッコさんはこころ通わせ才能を発揮し、
その輪はどんどん広がってゆく。
なんといっても<ヤッコさんの人間のよさ>がひしひしと伝わってくる。
いつも大成功というわけにはいかないけど
それが、ミステイクも悲しさもひっくるめてのヤッコさんの偽りのない姿。
多分ヤッコさんはどこかの国の王様にも道ばたの犬にも
同じように接する人なんじゃないかなあ、と思う。
誰に対しても公平。
本当の意味でまっとうにスゴイ人って、
自分のスゴサに気づいていない。だからスゴイ。
ヤッコさんが来店され、その笑顔に出会うと嬉しくなる。
さすがにきょうもかっこいいお洋服!お話しながら、
ああいうTシャツはこんなふうに着ればいいのかぁ、
この色のチェックにはあれをあわせんのネ、なんてチラ見しちゃう。
「ヤッコさん、これすてきですね」
「そお?ここんとこ切って、自分でざくざく縫ったのよ」・・・、
日本で第1号のスタイリストさんのアイデアをお借りする贅沢、えへへ。
今日よりすてきな明日を想って、ヤッコさんはきょうも走る!
「表参道のヤッコさん」高橋靖子 河出文庫 (税込798円)