一昨年、ミステリ系の賞を軒並みかっさらった「犬の力」の著者、ドン・ウィンズロウ待望の新刊、「サトリ」が熱い!

トレヴァニアンの<シブミ>の前日譚でもあるこの作品は、ウィンズトロウがエージェントから「2代目トレヴァニアンになる気はあるか?」という依頼を受けて始ったことなのだそうだ。
「2代目?朝日ソーラーじゃけん」とは言わずに、いや、無理っすよ、俺、(といったかどうかは定かではありませんが)と気後れしつつも、元々トレヴァニアンのファンでもありアジアが大好きな彼はトレヴァニアンの遺族のこころよい承諾を得て、周囲のすすめもあり決心したとのこと。

いや、これって大変な勇気とチャレンジ精神&力量を必要とすることですよね!「シブミ」が出版さたのはかれこれ30年余り前です、そしていまだに名著との誉れ高い作品の前日譚ともなれば作品の出来いかんによって「おめぇ、なかなかやるぢゃねえか」か「ふてぇヤローだ」のどちらかですもの。(江戸っ子か?)自分の評価どころか故人となった作家の名までどうにかなっちゃう可能性もあるわけです。
結論・・・「おめぇ、なかなかやるぢゃねぇか、ドンよ」。コレです!

「シブミ」で世界屈指の暗殺者としてとんでもない目に遭ったニコライの若き日の姿が余すことなく描かれています。しかし、この人、若いころからやっぱりとんでもない目に遭ってんのね。見えない敵やCIAという巨大組織を相手に繰り広げられる頭脳戦、裏切りと信頼。007&ランボー&ダイ・ハード&M:i:3&ラスト・サムライ。これ全部ニコライひとりでやってます、とてつもなく忙しいです、ハイ!
外国人の視点でみる東洋思想はやはり神秘的なんでしょうね、ん?コレって「わび・さび」ナンデスカ?ってちょっと違うような場面もあるんですが、まあ、それはご愛嬌でしょう。途中から舞台が中国にとんじゃうんで、ま、いっか。

「シブミ」で「裸-殺」っていう暗殺術が出てくるんですが、どんなワザだかがわかんない。
あまりに危険なワザだから説明できないのかな、って謎だったのが、「サトリ」で全貌が明かされた!(読んでのお楽しみ☆)

「シブク」って「サトッテ」るニコライの活躍をぜひ!「シブミ」と「サトリ」は別物と考えて読むのも
一考、どっちがいいとか優ってるとかはモンダイじゃないって気がします。

「サトリ」㊤㊦(単行本) ドン・ウィンズロウ 各1680円(税込)
「シブミ」㊤㊦(文庫本) トレヴァニアン   各882円(税込)
いづれも早川書房