クリーンヒット⚾ フィクション
『影を呑んだ少女』
フランシス・ハーディング 著
児玉敦子 訳
東京創元社 刊
2020年6月 発行
本体3300円+税
443ページ
対象:中学生以上

あたしのなかに幽霊がいる!」 カーネギー賞最終候補作の歴史ファンタジー

『嘘の木』ではじめて日本で紹介された英国のファンタジー作家の邦訳3作目。
本作もちょっとダークな雰囲気漂う、でも児童文学の要素もたっぷり感じられる物語です。

17世紀のイギリスが舞台。幽霊を憑依させることのできる不思議な能力をもつ少女メイクピースは、母親を亡くしたあと、父方の一族の屋敷に引き取られます。この一族は幽霊を取り込むことのできる能力を持っていました。悪いことにメイクピースを利用しようとしていることに気がついた彼女は、自由を求めて逃げ出しました。
波乱に満ちた逃亡劇が始まります。背景にイギリスの内乱ーピューリタン革命をも描き、歴史を知っているとなお楽しめるものになっています。とはいえ、知らなくても十分、メイクピースの個性にひかれて読み進めることができます。そして、幽霊がでてくるゴシックファンタジーの要素もあるという!

読み応えたっぷりの物語です。
途中、少しゾッとする描写もありますが、わたしはそんなに気になりませんでしたよ。主人公のメイクピースの強さが特に印象に残りました。とても魅力的な主人公です。 (す)