クリーンヒット⚾『だるまちゃんの思い出 遊びの四季 ふるさとの伝承遊戯考』 ノンフィクション
かこさとし 著
文藝春秋 刊
2021年5月10日 発行
定価825円(税込)
279ページ
対象:大人

絵本作家かこさとしさんの原点、子どもの“遊びの記憶”

科学者で絵本作家のかこさとしさんは生涯に数百点の作品をのこされましたが、そのライフワークに伝承遊び研究がありました。50年以上にわたって全国各地で収集した伝承遊びをまとめられた『伝承遊び考』(全4巻/小峰書店)で、2008年に菊池寛賞を受賞されています。今回文庫になった『だるまちゃんの思い出 遊びの四季』は、1975年にじゃこめてぃ出版から刊行されたものの再販ですが、『伝承遊び考』の原型ともいえる作品です。

春夏秋冬、自然の中で様々な遊びを通して学び成長する子どもの姿がかこさん自身の幼少期の記憶とともに語られる本書は、単に昔を懐かしむ大人の郷愁ではない“伝承遊びの意義”について読者に考えさせます。
自然の中で体を使った遊びを存分に体験するとき、子どもたちの五感は研ぎ澄まされ、自分たちの考えだした遊びをより楽しいものにするために頭をフル回転させて工夫する様子は、押し付けられた勉強では決して到達できない自主自立の精神に満ちています。
年の離れた仲間と遊ぶ中で教え・教えられながら対人関係を学んでいくことは、学校のように同年代の友人とだけ知り合う環境では身につけられない柔軟性を、子どもたちの心に育んだことでしょう。

かこさんの子ども時代と現在では子どもたちの生育環境や考え方に大きな違いがあり、単純に昔に戻ることはできません。ただ、この本で示されていることは「子どもの持っている力を大人はもっと信頼していい」ということなのではないかと思います。危険から守るために管理された安全・安心の中での“自由な遊び”は、子どもが持っている伸びしろを狭めてはいないか? そんな問いを自らに投げかける名エッセイです。(か)

「大人がいかに逆立ちをしても子どもになりきれるものではない。出来ることは、その自分の子ども時代の心情と感覚を呼び返し、そこから今の子どもに対し、大人として大人がしなければならぬ真の道を見出すことであろう。この書はそうした立場と、そこから導き出される今日の状況に対する、私なりの意見である。」
(「この本にこめた私の願い――まえがきに代えて」より)

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