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『ガラスの犬 ボーム童話集』
フランク・ボーム 作
津森優子 訳
坂口友佳子 絵
岩波書店 刊
2021年6月15日 発行
定価748円(税込)
206ページ
対象:小学校中学年以上

『オズの魔法使い』の作者が子どもたちへ贈る、アメリカ生まれのおとぎばなし集

かつてボストンにちょっぴり魔法の使える年取った薬剤師がいて、舞台女優を夢みるクラリベルに5色のあめ玉そっくりの薬を作ってやりました。それをなめると、たちどころに天才ピアニストや国一番の朗読家になれるのです。ところがクラリベルは帰り道、立ち寄った服地店に大事な薬の入った小箱を置き忘れてしまいます。小箱はリボンを買いに来た幼いベシーの手に渡り、その中からチョコレート色のあめ玉をなめたベシーは、突然天才的にピアノを弾きこなすようになりました。ベシーの両親と夕食に招いた大学教授も魔法のあめ玉を次々と口にし、その場は歌ったり踊ったり暗誦したりの大さわぎになってしまいます……。(「魔法のあめ玉」より)

欧米ではオズシリーズに次ぐ人気を集めているというボームの短篇集が日本初紹介となりました。どの作品も昔話の要素を上手に取り入れながら世の中を風刺したり、笑いの中にピリリとした皮肉と教訓が潜んでいます。子どもたちにとっては突飛で楽しい、少し大きく「おとぎ話は卒業した」と思っている年齢の子どもたち(大人たち)にも、世の中の深層を見るヒントを与えてくれます。

『オズの魔法使い』(1900年)の出版から1年後、ボームが人気作家となり成功の絶頂の時に書かれた本書には作者の「アメリカの子どもたちには、彼らが楽しめる新しいおとぎ話を」という熱い思いが込められています。初版に収められた12話の中から、特におもしろい話、アメリカらしい話を選りすぐって翻訳したという少年文庫版ボーム童話集『ガラスの犬』ーー120年の時を超えて翻訳されたアメリカのおとぎ話を、どうぞお楽しみください。(か)

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