ベスト👍 フィクション
『エチュード春一番 第三曲 幻想組曲[狼]』
荻原規子 著
KADOKAWA 刊
2021年8月25日 発行
定価770円(税込)
352ページ
対象:中学生から

八百万の神・パピヨン犬の姿をしたモノクロと共に平将門の時代にタイムスリップ!

ひょんなことから小犬の姿をした八百万の神・モノクロと暮らすようになった大学生の美綾。読んだばかりの『将門記』についてモノクロに話をしていると、モノクロが言います。「その時代に行ってみないか」と。
そして、あっというまに意識はモノクロと一緒に将門の時代へタイムスリップすると、おお! 目の前に本物の将門がいる! 実体はない感覚に次第に慣れた美綾は、モノクロと別行動をとっているうちに将門の護衛を務める蝦夷の少女ユカラの身体に閉じ込められるというアクシデントに遭遇します。その時、美綾はユカラの将門への気持ちを知ることができました。
一方、「えやみ」という邪悪な呪術が絡む親族との戦いが起こり、ユカラは「山の民」である狼たちと共に将門を守るために戦へ向かいますが…。

史実を絡ませた物語の構成は、さすがこの作者ならではの感があります。少し導入が力技? とも思えなくもないけれど、読み進めていくとその違和感は払拭され、あっという間に世界に引き込まれます。蝦夷や坂東とか、馬の描写などは『薄紅天女』を思わせる雰囲気もありました。時代的にも比較的近いのかな? 作者が楽しんで書いているようなかんじ。

第1作から5年越の3作目。このシリーズが今後どのような展開になっていくのか、見当もつきませんが(笑)、じっくりと楽しみながら待ちたいと思います。
とにかくパピヨン犬の姿をした神様と美綾の会話はクスっと笑わずにはいられません。モノクロの人間の姿、黒田くんもいい味出しています。
3巻目が刊行されて、とにかく嬉しいです。 (す)

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