クリーンヒット⚾ ノンフィクション
『「慰安婦」問題ってなんだろう? あなたと考えたい戦争で傷つけられた女性たちのこと』
梁澄子(ヤン チンジャ) 著
平凡社 刊
2022年1月 発行
定価1760円(税込)
223ページ
対象:中学生から

彼女たちの勇気が 世界の平和運動を動かした

著者の梁澄子さんは1990年から「慰安婦」問題に関わり、日本で裁判を起こした「慰安婦」サバイバーの女性たちを支え続けてきた方です。梁さんは語ります。

「「慰安婦」問題というと、日韓の政治問題のように語られることが多く、よくわからないというイメージがあるかもしれませんが、この(=被害者が経験した事実を知り、被害者たちの思いを受け止めるという)視点に立てば、いろいろな情報に惑わされることなく、「慰安婦」問題の本質が見えてくるはずです。」(はじめにより)

「慰安婦」と呼ばれた人たちが戦時中にどんな恐ろしい体験をしたのか、戦後どのように生きてきて、数十年経ってから被害者であることを名乗り出たのか、彼女たちは何を求めて裁判を起こしたのか、それに対して日本政府はどのような対応をとったのか。一つひとつのことが感情を排して、事実として冷静に語られます。読み手はこれまでのニュース報道で知らず知らずのうちに植え付けられた先入観を取り払われ、1人の女性が受けた心と身体への傷の大きさに呆然とするのです。梁さんの言うように「事実を知り、思いを受け止め」ようとすると、とても平静ではいられないことでしょう。では、知ってしまった私たちはどうすればよいのか――その重たい宿題を、一人一人が考え続けなくてはなりません。

「慰安婦」運動は、第2次世界大戦中に日本軍がおこなった戦時性暴力(戦争犯罪)という意味を越えて、今や世界の女性運動へと広がりを見せています。勇気を出して被害を訴えたハルモニたちの声が世界に届いたことで、現代の戦争での性暴力被害者と結びつき、犠牲になった女性たちの人権回復のための大きな平和運動へと繋がっていきました。

最後にもう一度、著者の梁さんの言葉をご紹介して終わります。(か)

「「慰安婦」問題は日本をおとしめるために取り組まれているわけではありません。想像を絶するような甚大な人権侵害を受けた女性たちが、自ら闘うことで被害回復を果たし、尊厳を回復していった姿を知ることは、人権が守られる平和な世界で生きていきたいと願う人に、大きな希望と勇気を与えてくれると思います。」(おわりにより)

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