ノンフィクションライターの城戸久枝さんが12年前に書かれた『あの戦争から遠く離れて』は、中国残留孤児であった父の半生を描き数々の賞を受賞されました。まだ日本と中国の間に国交がなかった時代に、様々な困難を乗り越えて日本の両親を探し出し帰国されたことは奇跡のように思われ、この本に大きな衝撃を受けたことを覚えています。しかし、戦後70年以上が経ち“中国残留孤児(の肉親探し)”という言葉を聞いたことがないという世代も増えてきている今、城戸さんが新たにこの作品を子どもに向けて書きなおされたことの意義はとても大きいと思います。「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにする」ためには、戦争を知らない世代があの時何があったのかをよく知らなくてはなりません。なぜ3歳の城戸幹(じいじ)が中国に一人残されてしまったのか、28歳で日本に帰国するまで日中双方にどのように彼を助けてくれた人がいたのか、忘れてはいけない戦争の歴史を子どもたちと一緒に大人も学びなおしたいと思います。
この『じいじが迷子になっちゃった』は新聞各紙でも紹介されました。ナルニア国でも8/6の朝日新聞朝刊・生活欄の記事と一緒に本を入口でご紹介中です。

『じいじが迷子になっちゃった あなたへと続く家族と戦争の物語』城戸久枝 著/偕成社 1600円+税