尾崎義さんの翻訳で長く親しまれてきたリンドグレーンの探偵小説『名探偵カッレくん』が、リンドグレーンコレクションの1冊として菱木晃子さんの翻訳で登場しました。イラストは、これまでも菱木さんとご一緒にラーゲルレーヴの「ニルス」を絵童話にした“ニルスが出会った物語”シリーズ(福音館書店)や、サーメの昔話『巨人の花よめ』(BL出版)などを手がけてこられた平澤朋子さんです。
リンドグレーンというとピッピややかまし村、エーミルやロッタちゃんなどの低学年向けの作品と、『はるかな国の兄弟』『ミオよ、わたしのミオ』などの高学年向けの重厚なファンタジーはよく知られていますが、その中でカッレくんは少し埋もれ気味(とは個人的な印象です…)で「もっと読まれてもいいおもしろい作品なのになぁ!」と思っていたので、コレクション入りによって新しい読者を獲得できるのではないかとワクワクしています。子どもの本といって侮るなかれ! 翻訳者の菱木さんいわく「北欧ミステリーの原点であるといっても過言ではない」カッレくんシリーズはまさに“本格推理(児童)小説”なのです。伏線もあちこちに隠され大人が読んでも十分な読みごたえがあります。もちろん、お話はリンドグレーンらしい子どもたちの豊かなあそびに満ちていて児童文学ファン&リンドグレーンファンも満足すること間違いなし。もしまだカッレくんのお話を読んだことがない方がいたら、ぜひこの機会にお手に取ってください。

★2020年1月13日(月祝)には、新訳「カッレくん」と12月公開の映画「リンドグレーン」の翻訳監修をされた菱木さんにご講演をいただきます。詳しくは決まり次第ホームページ等でご案内いたします。

『名探偵カッレ 城跡の謎』アストリッド・リンドグレーン作/菱木晃子訳/平澤朋子絵/岩波書店 2000円+税
続編『地主館の罠』(2020年春・刊行予定)、『危険な夏の島』(2020年秋・刊行予定)もご期待ください。