珍しいことに今月は岩波少年文庫の新刊が2点出ました。1冊は1979年に冨山房から出たアフリカの民話集『キバラカと魔法の馬』の復刊です。アフリカの各地に伝わる魔法や精霊・魔人などの出てくる不思議なお話ばかりが集められたものーー長く絶版となっていた本が、またこうやって読めるようになったのはとても嬉しいことです。遠く離れた国ぐにのことを普段の生活の中で意識することは少ないですが、物語を通して知る・つながることができたらいいなと思います。もう1冊は江戸時代の作家・井原西鶴の作品を読みやすく翻案した『ぬけ穴の首』です。歴史の授業で名前だけは学んだけれど作品は読んだことがない……という方が多いのではないでしょうか(かく言う私もその一人)。でも、「いやもう、欲に目がくらむと、兄弟仲でもたちまちいさかいがはじまるといったことがないわけではない。」なんていう出だしを読むと、「江戸も今も人間って変わらないんだなー」と思いますし、そう気づくと俄然読んでみたい気が高まります。芭蕉・西鶴・近松などの近代文学研究者が少年向けに翻案したもの、試しに読んでみませんか?

『キバラカと魔法の馬 アフリカのふしぎばなし』さくまゆみこ編訳/岩波書店 640円+税
『ぬけ穴の首 西鶴の諸国ばなし』廣松保 作/岩波書店 640円+税