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内容詳細

改革派礼拝学研究の第一人者が、礼拝の基本原理から、説教、サクラメント、賛美、祈りといった諸要素に至るまでを、歴史的・神学的に考察。改革派教会の伝統の豊かさと将来への展望を描く意欲的力作。

 

【目次】

目次

第1章 いくつかの基本原理

第2章 洗 礼

第3章 主の日

第4章 賛美の務め

第5章 御言葉の務め

第6章 祈りの務め

第7章 主の晩餐

第8章 日々の祈り

第9章 施 し(慈善の献金)

第10章 伝統と実践

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書評

御言葉によって改革される礼拝

関川泰寛

 本書の原題は、『礼拝――聖書によって改革される』です。確かに、叙述全体はカルヴァンに代表される改革派教会の神学と実践に焦点が当たるように構成されていますが、聖書、古代、中世、宗教改革、近現代の時代ごとに、礼拝に関わる諸課題が丁寧に論じられています。諸課題とは、洗礼、主の日、賛美の務め、御言葉の務め、祈りの務め、主の晩餐、日々の祈り、施し、伝統と実践です。これらが各章ごとに取り上げられ、歴史に沿って、神学と実践がどのように展開されてきたかを、読者はわかりやすく学ぶことができます。

 本書が、牧師や神学生はもちろん、教会の読書会などでも広く用いられることを期待します。なぜなら、本書は、礼拝の本質とは何か、わたしたちの教会の礼拝のルーツがどこにあるのか、さらに今日どのように礼拝改革を進めることができるかを考える手がかりを適確に与えてくれるからです。改革派教会の伝統に生きる教会だけでなく、日本のキリスト教会全体に広くお勧めしたい書物です。

 さて、著者のオールドは、アメリカ合衆国長老教会(PCUSA)に属する、指導的な礼拝学者であり、これまで多くの著作を公にしてきました。わたしの手元にも、彼の数冊の著作がありますが、その中に『改革派教会の礼拝の教父の源泉』(一九七〇年、未翻訳)があります。この書物は、主の祈りや説教、聖餐、日々の祈りなどの諸課題を各章ごとに取り上げながら、宗教改革者たちの神学の背後にある古代教父の伝統の源泉を明らかにしている学術書です。オールドが、宗教改革者の礼拝の神学と古代教父の神学の密接なつながりに、若いころより関心を抱き研究を重ねてきたことがわかります。伝統との対話という著者の関心は、本書にも見られ、宗教改革者たちの神学の背後にある古代教父の伝統との連続性が随所で指摘されて、宗教改革の神学と実践が、中世の伝統の刷新にとどまらず、古代教会の伝統という源泉の継承でもあったことを読者は認識することができます。このあたりの著者の問題意識は、本書の最終章「伝統と実践」によく表れています。

 そこで最終章を真剣に読む者は、自身が属する教会の礼拝についての分析や反省、礼拝の改革の可能性など、多くの問題を突きつけられるでしょう。著者は一四項目を掲げて、現代の教会が、教会の伝統から何を受容し、改革へと生かしうるかという提言を具体的に示しています。礼拝改革にあたって、復古主義でも伝統捨象でもなく、聖書という規範に従って、伝統に向き合いながら、伝統を維持する価値を十分認識しつつ、礼拝の改革と刷新がわたしたちの課題であることを伝えています。

 オールドによれば、伝統は、わたしたちの根源にあるものとの接触を可能にしてくれます。当然そこで守るべきものが明らかになります。さらに伝統は永続的価値という素材を持っています。古代教父や宗教改革者たち、つまり信仰の先達たちは、何度も霊的な遺産を産みだし、わたしたちの教会が継承すべき永続的な価値を明らかにしてきました。わたしたちが古典を評価するのではなく、古典がわたしたちを評価するのと同じように、礼拝の神学の伝統にもまた同じことが言えるとオールドは指摘します。

 本書は、伝統が聖書の権威を主張する限り、伝統を保持し継承するという立場を一貫して守っています。そして伝統の根源にあたるところに、契約の神学や頌栄性、聖霊論の重要性など、教理的な示唆を与える指摘とともに、洗礼と教理教育(カテキズム)の結び付きの重要性、さらに詩編の祈りを回復する試みなど実践的な提言もなされています。わたしたちが、教会の礼拝の神学と実践の根底に流れるものを知れば、むしろ伝統を生かすために、どのような礼拝刷新が必要かという神学的課題も与えられるはずです。ぜひ一読を勧めたい書物です。

(東京神学大学教授、日本キリスト教団十貫坂教会牧師=せきかわ・やすひろ)

『本のひろば』(2013年3月号)より