『人間と昆虫のこれからを考える』

『人間と昆虫のこれからを考える』
沼田英治 著
岩波書店 刊
2025年11月20日 発行
968円(税込)
178ページ
分類:ノンフィクション
対象:中学生から

昆虫と共に生きる!

昨今、昆虫を極端に嫌う人が多いように感じます。そんな人にこそ手にしてほしいと思えるものでした。著者も「はじめに」でこんなふうに言っています。
「これから人間と昆虫がどう関わっていくべきかを考えてもらうきっかけになってくれればよいと思って書きました。決して昆虫好きな人のために書いたのではありません。(中略)むしろ昆虫嫌いな人や、自分の人生は昆虫とは関係ないと思っている人にぜひ読んでもらいたいと思っています。」
この言葉とおり、著者の考えを読者に押し付けるのではなく、事実を提示して思考を深めるものになっているんじゃないかな、と思えました。

導入のエピソードがとにかく秀逸! 思わず笑ってしまいました。
それは「プロローグ:ゴキブリから考えてみよう」と題したもので「ゴキブリは好きですか?」「嫌われる理由」「ゴキブリのさまざま」「ゴキブリから見えてくる人間と昆虫の関係」の内容で展開します。
そして「1章:昆虫って何?」「2章:昆虫の体」「3章:病気と昆虫」「4章:農業と昆虫」「5章:生活の中の被害」「6章:人間に恵みをもたらす昆虫」「7章:新しい恵みをもたらす昆虫」「エピローグ:人間と昆虫のこれから」と続いていきます。
とにかく論旨が明快で、文章も読みやすく、サクサク読めちゃう。具体例を多くひいていて、わかりやすいのがとてもよいです。
なかでも特に興味深かったのが第2章(とはいえ、どの章もおもしろくて読みながらうなずいたり、唸ったりと忙しかった!)。昆虫の体のしくみを丁寧に説いており、「へえ~」の連続でした。
昆虫は脱皮して成長するもののほか、成虫になる際に体の形を著しく変わる「変態」と呼ばれるものがあります。何度説明を聞いても「変態」って不思議でなりませんが、この変態のしくみこそが昆虫が地球上で繁栄している理由ではないか、との著者の考えに大いに共感した次第です。

巻末にはもっと知りたい人のための本の紹介や引用した本も掲載されているので、参考になります。
多様性と数の多さが特徴で、人との関りが深い昆虫のこれまでとこれからを展望する1冊です。
中学校や高校の生物の副読本とかによさそうです。 (す)