『恐竜とぼくー好きが未来になる瞬間』
『恐竜とぼく―好きが未来になる瞬間』
小林快次 著
創元社 刊
2026年6月20日 発行
1980円(税込)
333ページ
分類:ノンフィクション
対象:中学生から
カムイサウルスはじめ多くの発見を成し遂げた“ダイナソ-小林”が語る成長と挑戦の日々
NHKラジオの「子ども科学電話相談」の回答者として、”子ども恐竜博士“との対等な会話を楽しむ、ひょうひょうとした話しぶりに聞きなじんでいる私は、小林快次さんがどのようにして恐竜研究の第一人者になったのか、興味津々でページを開きました。
意外にも、始まりは仏像。小学生当時は、難しい漢字がたくさん出てくる仏像の世界にわくわくしていたそうです。同じように歴史的時間の流れの重みを感じる存在として、化石へ興味が移ったのは中学生の時。担任が顧問をしている理科クラブに入り、アンモナイト探しにはまります。化石をもとめて石を割ると、石の中に蓄積された1億年以上の自然界の「ページ」をめくっているような感覚に包まれました。
しかしその後、恐竜化石発掘の道へまっしぐらかと思いきや、しばらくは「流されて」の大学進学、アメリカ留学へと進みます。(成り行き任せとはいえ、周囲に推されてアメリカ留学できるのは、すごいことです!)コミュニケーションに苦労し辛酸をなめて帰国した1年目。19才の小林さんは、たまたま大学の図書室で恐竜図鑑を開き、その時“初めて”恐竜にときめきを感じます。また同じ頃、「いまを生きる」という映画に出合い、その中で英語教師が言う「Carpe Diem―今を生きろ」という言葉が、生涯のモットーとなりました。
そして。傷心の帰国から3か月後、今度は自分の意志でアメリカの大学へ戻り、ほどなく快進撃が始まるのです。レジェンド博士が居並ぶ学会での研究発表。ゴビ砂漠で貴重な標本を次々に発掘。ネイチャーに日本人の恐竜論文として初掲載。福井県立恐竜博物館の開館メンバーとして尽力しながら博士号を取得。現在は、北海道大学総合博物館にて、後進を育てるという次のステージへと進まれています。その間の小林さんのすさまじい努力と探検、発見、それらを支える多くの出会いに恵まれたことは、ぜひ読んでお確かめください。
最終章で、哲学の研究者となった幼ななじみに対して、「恐竜学者の幸福とは」を語る場面があります。その厳しくも人生を肯定する内容は、私が高校で講師をしていた頃、将来どんな自分になりたいかという質問に、「幸せになりたい」と書く生徒が多かったことが思い出され、こんな風に伝えられればよかったなあと、深く感じました。 (ふ)
