『ベンチのゆうれい』

『ベンチのゆうれい』
マージョリー・ワインマン・シャーマット 作
小宮由 訳
早川世詩男 絵
岩波書店 刊
2026年6月 発行
1650円(税込)
62ページ
分類:フィクション
対象:小学校中学年から

公園のベンチに ゆうれいが出るんだって!

ある公園の大きな木の下にある古いベンチには、男の子(ベンジャミン)と女の子(ジャスミン)のゆうれいがついています。夜になるといつもこのベンチの上に出てこなければならない二人はその日、退屈しのぎにお話を作ることにしました。それも、このベンチであったことのお話です。ベンジャミンのリクエストに応えてジャスミンがしたのは、おこりんぼのローダのお話。ジャスミンのリクエストでベンジャミンがしたのは親友のお話。二人は夜明けまでお互いにお話を語って聞かせます。そして最後のお話は、有名な発明家だったベンジャミンと、きれいな俳優だったジャスミンの、二人の出会いと大切な思い出のお話でした。

ふたりが語るベンチにまつわるお話は、そこに来ることでイライラやモヤモヤが消えていったり、思いがけず親友が見つかったり、偶然の出会いが人々を幸せにするちょっとした魔法がかかっています。ベンジャミンとジャスミンにとって、この何の変哲もない古いベンチが特別な存在だったからこそ、こんな素敵な物語が生まれてきたのだと知ると、読者の中にも自分にとっての“特別”を大切にしたい気持ちが自然に芽生えてきます。あっという間に読めてしまう短いお話ですが、なんともいえず気持ちの良い作品です。

夜に二人の幽霊が登場する場面は黒の背景で描かれ、二人が語るお話の世界では白い背景となり、物語の枠が読者に分かりやすく示されます。イラストは毎ページに挿入されていますが、モノトーンで抑えられているため邪魔な感じはまったくありません。動かないベンチと対照的に軽やかな動きでお話をひっぱる幽霊たち――本作の魅力は早川さんの挿絵によるところが大きいように感じます。(か)

お問い合わせフォーム