ベック ぼくたちの小川をすくえ!
『ベック ぼくたちの小川をすくえ!』
アンソニー・マゴーワン 作
尾﨑愛子 訳
岩波書店 刊
2026年7月 発行
1870円(税込)
166ページ
分類:フィクション
対象:小学校高学年から
笑って、はらはらして、スカッとする物語
両親の大事な用事の間、田舎のおじいちゃんの家に預けられることになった12歳のカイル。一人暮らしで偏屈なおじいちゃんとの時間に、さぞや退屈するだろうと思っていたカイルの予想は、家の近くを流れるベック(小川)の探検で、まったく予想外のものとなります。水草だらけの小さな川はトゲウオやブルヘッド、ザリガニなどの生き物の宝庫で、岸辺の草むらにもたくさんの小さな生き物たちが暮らしていたのです。身近な自然の豊かさに魅了され心を躍らせるカイルですが、このベックの下流には大手企業による駐車場と倉庫の建設計画が持ち上がっており、まもなくそのための議員視察が行われることになっていることをおじいちゃんから知らされます。そしてどうやら、おじいちゃんにはこの開発を阻止するために考えていることがあるようです。カイルはその計画を手伝おうと週末におじいちゃんの家を訪ねますが、台所で倒れているところを発見して……。
カイルを取り巻く登場人物はみな個性的です。特にエルヴィス・プレスリーのものまね芸人をしていたというおじいちゃんは、家に迷い込んできた3本足のブサイクな犬に“ルードワード”(きたない言葉)と名付けたり、よれよれの汚いカツラの葬式をしたり、ベックを守るためには規則を破ることもいとわず大胆な作戦を思いついたり、模範的な大人像からはいささか逸脱したところが魅力的。おじいちゃんの家の隣に住む少女カーティは冷静で勇敢、カイルのいじめっ子に対峙する場面のカッコよさは格別です。
著者の子ども時代の体験と記憶から生まれた本書は、まさにベックが主役の物語。カイルやカーティ、おじいちゃんと一緒に冒険の興奮を味わってください。(か)
