エントラーダの子どもたち
『エントラーダの子どもたち』
エレン・オー 編
原田勝 ほか訳
あすなろ書房 刊
2026年6月30日 発行
1980円(税込)
280ページ
分類:フィクション
対象:小学校高学年から
「移民の国アメリカ」の日常を描いた12の家族の物語
アメリカのとある街に建つ6階建てのアパート「エントラーダ」。スペイン語で「入口」という意味をもつこのアパートには様々な民族のルーツをもつ人たちが暮らしています。主人公はエントラーダに住む子供たち。12人の子どもたちが各章で主人公となる連作短編集です。
母国からアメリカに移住し、新たな生活を始める家族。文化の違いから起こる隣人同士のいざこざ…。人種のサラダボウルと呼ばれ、多様な人種が集まるアメリカを体現するような本書ですが、私が心に思い浮かべたのは、日本に住む外国にルーツをもつ子どもたちです。最近では、ますます多くの在留外国人が来日しており、職場や学校など身のまわりで接する機会が増えました。日本に住む外国の子どもたちも、お話の中の子どもたちのように文化、言語の違いに困難を抱えながらもたくましく暮らしているのかな、と思いを巡らせます。
一方で、初めて好きな人ができたことに戸惑い、家族や友達との関係に悩む彼らの姿は私たちと変わりません。人とかかわることを恐れず、心をひらいて相手と向き合い言葉を交わす大切さは、住んでいる場所、その人のもつルーツとは関係ない、万人に通ずることと感じます。
この作品はwe Need Diverse Books(略称WNDB)という団体が企画しました。団体についてはあとがきに詳しいのでぜひそちらをご覧いただきたいのですが、その理念に共感した12人の作家たちによって1話ずつ分担してつくられたのが本書の特徴です。同様に翻訳も、原田勝さんをはじめ12人の訳者が1話ずつ担当しています。短編集なので読みやすく、それでいてそれぞれのストーリーに繋がりがあるので、長編小説のような読み応えもあります。
そしてもう一点注目していただきたいのは、彼らの食卓を彩る料理の数々です。母国の料理を作る様子、味わう様子がなんと魅力的なこと!そして最後には、その料理がいがみ合っていた人たちの心を結びつけます。本書には、お話に登場する料理の写真が掲載されているリストが付属品としてついおり、そちらも必見です。(ほ)
