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内容詳細

プロテスタント教会の代表的な説教者の一人であるジョン・ウェスレーの聖書注解、著作、説教から抜粋し、一日一章として編み直した労作。御言葉と解説が、創造、堕落、義認、新生、聖化、終末といった神学的主題ごとに配列され、1年間でウェスレーが目指していた真実なキリスト者の生き方を理解することができる。一日を生きる喜びと平安を与えてくれる珠玉の言葉。

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書評

生きて働く信仰を学ぶ最上の手引き

黒木安信

 

 今年はジョン・ウェスレーが誕生して区切りのいい三一〇年、召天して二二二年になる。英国人にしては小柄な体を駆使してキリストへの愛に燃え、馬や徒歩で町々を巡り、各地で説教し、信徒の生活訓練や指導に当たり、貧しい人々のための学校や福祉施設の設立にも奔走した。彼が旅行した距離は約三五万キロ、五〇年間に四万回を超える説教をしたと伝えられている。

 本書は、そのウェスレーの膨大な著作の中の、『ジョン・ウェスレー著作集』第五~七巻、『新約聖書注解』、『標準説教』から主に引用されている。一ページずつ三六六日で読めるように工夫され、その日の個所には聖句とテーマが付けられている。

 本書において繰り返し語られていることは、聖書と聖霊の光に照らして自らの信仰の在り方を見つめ、吟味することである。そして示された内なる罪を神の前に悔い改め、キリストの十字架による赦しと聖別を受け、新しく造りかえられること。この悔い改めの必要については、随所に取り上げられている。 

 私たちが悔い改めなければならない罪とは、「内に深く根差した腐敗」(2月1日)であり、「不信仰」、「虚しさ、称賛されたいという思い、野心、貪欲、肉の欲、目の欲、高慢」、「怒りや憎しみ、悪意、復讐心、ねたみ、嫉妬、邪悪な思い」、「これらは魂を多くの悲しみで突き通し、防がないと魂を永遠の滅びに突き落とすことになります」(以上、2月2日)と警告している。 

 神の恵みをさらに獲得したいと願っている人はすべて「主の晩餐にあずかる」という「恵みの手段」を用いることが繰り返し勧められている。彼は、「私は死ぬ日まで恵みの手段を信頼します」(2月26日)と述べている。そしてキリスト者の信仰が成長できない最大の原因は、「自分を捨てることと十字架を背負うことが常に欠如していること」(9月21日)であると指摘する。特に、「自分の内部の罪と決別しようとしないから」(同)であると。

 なぜそうしたことになっていくのかについてウェスレーは、義認と新生があいまいにされているからと言う。「義認と新生は単純に区別されます。それらは同じではなく、かなり異なった本質を持っているのです。義認は関係的な変化を、新生は実際的な変化を意味します」。「義認は子とすることによって私たちの神との外側の関係が変化することです。義認は敵との関係も変化させます。新生によって私たちの内側の魂は変化し、罪人である私たちは聖徒とされます。義認は神の好意を回復し、新生は神の像を回復させるのです」(8月12日)と。

 この神との「関係的な変化」(relative change)と「実際的な変化」(real change)については、ウェスレーの『説教19』「神より生まれた者の偉大な特権」、『説教43』「聖書における救いの道」に詳しい。言うまでもなく、ウェスレーの述べる「新生」(new birth)とは聖化(ホーリネス)のことで、そこに進んでいかない信仰の問題性が繰り返し警告されている。それはウェスレーが常に語っているように、聖霊によってもたらされる「心と生活」の実質的な変化のことである。

 ウェスレーの有名な説教、「心の割礼」(『説教17』)はこの聖書的聖めを明快に語っていることとしてよく知られている。本書でもこの「心の割礼」が強調されている(9月29日、30日、10月2日、他)。ウェスレーは、「内的・外的な聖性を生み出さない信仰は真実のキリスト者の信仰ではありません」(4月5日)とまで言い切っている。そこに生涯、聖書的「キリスト者の完全」を主張し、証しし続けたウェスレーの生きて働く信仰とその実質がうかがえるのである。本書に毎日を導かれていくなら、素晴らしい至福のデボーションの時が与えられるはずである。

 最後に、ウェスレーの素晴らしい祈りを紹介しておきたい。「主よ、キリストが私たちを愛されたように、行いと真実によって互いを愛することができるように最善に導いてください!」(10月25日)。訳者の多大のご労に感謝しつつ。

(くろき・やすのぶ=ウェスレアン・ホーリネス教団浅草橋教会牧師)

『本のひろば』(2013年4月号)より