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内容詳細

福音によって生き返る経験を

どのような状況にあっても神の導きにしたがう、キリスト教の信仰。聖書の御言葉に聞き、新たに生き返らせる 福音を伝える。日本基督教団銀座教会、鳥居坂教会で「聖霊」の業を語った27 篇の説教。 土の塵のような私たちが今日も生きる者とされています。生きることは、ただ人間の繁栄によるのではありません。そうでなく、神の息によって命を受け、生かされているのです。神の息を受けて、神の命に繋げられているのです。 (本文「人を生かす神の息」より) ●著者紹介 近藤勝彦(こんどう・かつひこ) 1943年東京生まれ。東京大学文学部卒業,東京神学大学大学院修士課程修了,チュービンゲン大学に学ぶ。神学博士(チュービンゲン大学)。東京神学大学教授、学長を経て、現在は同大学名誉教授。日本基督教団銀座教会協力牧師。 ●好評既刊 『中断される人生』『癒しと信仰』『クリスマスのメッセージ』『確かな救い』ほか多数。

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書評

聖霊の助けによって信仰を与えられる

岡村 恒

 「若い牧師たちの説教の戦いに対し励ましを与えることができれば幸い」(はじめに)との祈りと願いが、この説教集からあふれ出ています。同時に、若い説教者たちだけでなくむしろ、すべての信仰者、聖書の福音を求める聞き手に、豊かな慰めと励ましとを差し出す一冊です。
 近藤勝彦先生一〇冊目の説教集である本書は、表題の通り「神の息」によって生かされる信仰者の幸いを、余分な混ざりものが何一つない言葉を重ねて描き出しています。読み始めた途端に、まるで礼拝の場に身を置いて、直接耳にしているかのように、豊かにあふれ出てくる言葉に出会うことになります。
 この説教集には、二〇一一年から二〇一三年にかけてなされた説教から二九篇が収録されています。旧約聖書から五篇、福音書から一五篇、使徒言行録と書簡から九篇です。聖書全体から、色とりどりのメッセージが語られているようでありながら、主イエスの十字架と復活の福音に立つ信仰だけが命の源であることが徹底して語られています。東日本大震災以後の説教は、私たちの世界が大きな問いに直面し、真実の慰めが求められている中で語られた説教です。またこの時期は、東京神学大学の学長職後半期と学長職を退かれた時期で、ご自分に託された大きな使命を担い、受け渡していく中で語られたものでしょう。しかしこの説教集には、「説教という、人間にとって本当は不可能な、しかし幸いにも許された務めに召されたこと」への感謝があふれ出ています。繰り返し「キリスト者というのは」という言葉が登場します。神に召され、聖霊の助けによって信仰を与えられた者として、聖書が明らかにする「キリスト者の幸い」をひたすら語り続けることが、説教の務めに召された感謝を表す唯一の道に他ならないからです。
 「第一部 旧約聖書からのメッセージ」では、大災害のさ中においてもなお確かな希望を支える「創造の信仰」の力強さや、罪の赦しの洗礼によって聖霊を受けて新しく創造されて「生きる者」とされる幸いが、大胆に説き明かされています。キリスト者というのは、「今日も神の人工呼吸によって胸いっぱいに命の息を吹き入れられ、......生きる者にされている、......それを思い起こす人のこと」(二四頁)だとの言葉に触れる時、洗礼によって生かされ、生かされ続ける恵みを、新しく受けとめることになります。神の「選び」によって与えられる礼拝の生活、試練の中で繰り返し発見する神の摂理、先手を打って進めて下さる神の救いの御業。旧約聖書のよく知られた物語から、今ここで生きる私たちへの神の恵みが説き明かされていきます。
 「第二部 福音書からのメッセージ」では、クリスマス、山上の説教、受難等の聖書箇所から、「キリスト者とは」どういう存在かが、さらに大胆に説かれます。信仰者には、「主イエスの死こそ命の源」と信じて告白し、主が共に居て下さることを繰り返し味わって歩むことが許されている。キリスト者は、「主に仕えられ、主に仕えて生きる者」であり、「キリストの足もと以外に行くところを持たない者」だと、力強く語られます。
 「第三部 使徒言行録ならびに書簡からのメッセージ」においては、使徒言行録から黙示録に記された教会の信仰が、私たち自身の信仰と重ね合わせて示されます。初代教会には「御言葉を聞いて洗礼を受けた群れのなかで相互の交わり」(一六四頁)があり、「神の御業と神の御栄光」がその信仰生活の主題だったと。私たちの信仰生活の根本に「聖霊のうめきによる偉大な助け」があることは、本当に大きな慰めです。
 頁ごとに凝縮された言葉が新しい光を放っています。「今の課題の一つは、もっと削ること、シンプルにすること、......説教が単純になること」(あとがき)と言われる近藤先生の、次の説教集を心待ちにします。

(おかむら・ひさし=日本基督教団大阪教会牧師)

『本のひろば』(2014年10月号)より