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内容詳細

政治・科学・経済・教育・性など価値観が多様化するものごとを、
キリスト者はどのように考えればよいのか?

「創造」「堕落」「あがない」と続く聖書物語を再読し、今を生きるキリスト者と教会に「神が創造された世界の回復」という宣教的使命を指し示す。
キリスト者の生き方の指針を学ぶ一冊!

「神の民に求められているのは、被造世界全体に対する神の新しいご支配の福音を知らせることです。キリストの王権は全世界に及んでいます。神の宣教も同様に全包括的です。それは、イエスがもう一度、結婚と家庭、ビジネスと政治、芸術とスポーツ、レジャーと学問、性と技術を支配される、との福音を具体化するものです。福音は御国の福音ですから、その福音の宣教も創造と同じように広いのです」(本文より)

【目次】

増補改訂版への序文

第一章 世界観とは何か

第二章 創造

創造の法
創造における神の言葉
創造の拡がり
創造の啓示
創造の展開
創造は良いものである

第三章 堕落

堕落の範囲
罪と創造の関係
構造性と方向性
ゆがんだ被造世界としての「世」

第四章 あがない

救いとは回復を意味する
神の国
イエスの伝道活動
御国についての他の見解との比較
一つのたとえ

第五章 構造性と方向性をわきまえる

改革
社会的更新
個人的更新
結び

あとがき──物語と宣教を媒介する世界観
訳者あとがき

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書評

信仰を持つだけでなく生きるために

廣瀬薫

 昔から何度も読み返してきた本である。以前の版(一九八九年)以来長く絶版になっていたが、この度「増補改訂版」として、出版社を代えて出された。本文はマイナーチェンジだが、長い「あとがき」が加わり、頁数で三十数頁増えている。本書が手に入るようになったのは、大いに喜ばしいことだ。

 日本のキリスト教会の一つの印象は、「どうしたら救われるか」を非常に良く教えてくれるのだが、「救われた後をどう生きるか」をあまり教えてくれないことだと思っている。すると、日曜日の礼拝の価値観と週日の生活の価値観が分離して、「聖俗二元論」に立った生き方になりがちだ。日曜日は「神の民」だが、週日は「この世の民」と変わらぬ生き方に流されてしまう。つまり「信仰を持つ」だけで停滞し、「信仰を生きる」所に進まないのである。価値観が分離した生き方を長く持続することは、もちろん難しい。その結果、日本の教会は、大量の信徒の「教会離れ」を招いてきた。「クリスチャンの平均寿命」の短さが自嘲的に揶揄され、「卒業信者」などという本来意味不明の言葉が流布してきたのだ。

 鍵は、救われた後、信仰を持つだけでなく生きるための土台となる、キリスト教世界観を持つことだ。本書はそれを教えてくれる非常に大切な内容を持っている。これで牧師も信徒も、聖書が教える世界観の枠組みを持って、日曜日にも週日にも、教会でも社会でも、神の国の民としての一元論に立って生きることができる。人生や世界のあらゆる問題について、「答え」ではなく、「聖書的な問いの立て方」を教えてくれる。これが大切なのだ。

 私が仕えている東京基督教大学(TCU)の特徴は、「聖書のキリスト教世界観」に立って実践的に生きるための教育である。大学のアピールのために、教会や集会や講演会で、「聖書のキリスト教世界観」についてパワーポイントを用いて説明することが多い。その際によく受ける質問は、「良い参考書は何か」というものだ。今まで少々返答に迷ってきた。本書は間違いなくその必要に応えるものだ。必読書の一つである。その上で、ご参考になればと思い、四つほどコメントを加えたい。

1 本書は、聖書に立って生きようと願う者が誰でも受け止められる、普遍的な内容であると思う。著者の背景が改革派であるために、改革派神学の解説であるかのように感じる人があるかも知れないが、そう受け取る必要はない。言及されてはいないのだが、本書には例えば、福音主義の「ローザンヌ誓約」や、カトリックの第二バチカン公会議の姿勢に通じる内容が多くあるのだ。読者は、自分の教派的伝統や興味に引き寄せて、視野を広く持って読むと良いと思う。

2 日本における宣教に用いたい。私は未信者に伝道する時にも、聖書のキリスト教世界観を織り込んでいる。救いの喜びを説明すると共に、救われた後の生き甲斐に満ちたクリスチャン生活の喜びを説明して、信仰を生きる人生の展望を初めから分かち合うのが良いと思っているからだ。

3 本書は聖書の世界観の背骨となるものを提示し、同時にその適用として多くのテーマに触れている。コンサイスにまとまっているから便利であるが、そのため非常に濃縮されている。内容をよく咀嚼して、自分がこの世で取り組むべき次のテーマに学びを進める入口として活用するのが有意義である。

4 本書はキリスト者の世界観の枠組みを、「創造―堕落―あがない」という枠組みで説明し、それに立って課題に取り組むために「構造性と方向性」という考え方を提示している。同じことなのだが、私は「創造―堕罪―回復―完成」という四つのポイントの枠組みで提示するようにしている。「創造」から「完成」に至るのが「方向性」の意義であることを明示すると、希望に満ちた信仰生活になると思う。ご参考になれば幸いである。

(ひろせ・かおる=東京キリスト教学園理事長)

「本のひろば」(2018年8月号)より