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内容詳細

この一冊で聖書が分かる!

全世界で読まれ、絶大な影響を与えた聖書。現代を代表する神学者が、多様な形式が用いられた壮大な書物を概観し、全66巻を一挙に解説。理解を助ける年表・地図・図版を豊富に収録。
深井智朗氏(東洋英和女学院院長)、鹿島田真希氏(作家)ご推薦!

◆著者紹介
A.E. マクグラス(Alister E. McGrath)
1953 年生まれ。英国国教会で按手礼を受けた後、オクスフォード大学、ロンドン大学の教授を経て、2014 年 より再びオクスフォード大学で科学と宗教の教授を務めている。著書に、『宗教改革の思想』『キリスト教神学入門』『神は妄想か?』『憧れと歓びの人 C.S. ルイスの生涯』ほか多数。

◆訳者紹介
本多峰子(ほんだ・みねこ)
現在、二松學舎大学教授。著書に、『悪と苦難の問題へのイエスの答え』。訳書に、G. M. バーグ/ D. ラウバー編『だれもが知りたいキリスト教神学Q&A』、N. T. ライト『悪と神の正義』ほか多数。

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書評

聖書に親しむための最良の伴侶

山本芳久

 『旧約新約聖書ガイド──創世記からヨハネの黙示録まで』の著者であるアリスター・マクグラスは、『キリスト教神学入門』(教文館、二〇〇二年)、『総説キリスト教──はじめての人のためのキリスト教ガイド』(キリスト新聞社、二〇〇八年)といったキリスト教神学に関する本格的で体系的な入門書を多数執筆している、現代世界を代表する神学者の一人である。

 マクグラスの精力的な活動の一端に、評者も直接触れたことがある。それは、「毒か癒やしか? 現代世界における宗教的信仰」という二〇〇七年にジョージタウン大学において開催されたクリストファー・ヒッチンスとの討論会においてであった。ヒッチンスは、生物学者であるリチャード・ドーキンスと並ぶ戦闘的な無神論者として知られ、『神は偉大ではない──宗教はいかにして全てを毒するか』(二〇〇七年)というベストセラーを刊行したばかりであった。自らの無神論的な見解を一本調子に述べ立てるヒッチンスに対して、キリスト教思想史の全体を熟知したところから生まれてくる多面的でバランスの取れた応答をするマクグラスの平衡感覚から、極めて強い印象を受けた。

 『旧約新約聖書ガイド』においてもまた、マクグラスの平衡感覚が遺憾なく発揮されている。周知のように、現代の聖書学は極めて専門分化の激しい分野となっている。「聖書学者」と呼ばれていても、聖書の全体ではなく、旧約聖書または新約聖書のなかに含まれるごく一部の文書の専門家であるのが通例である。専門としている文書については詳しい註解を書くことができても、それ以外の部分については沈黙する、または通り一遍の説明に終始してしまうというのが通例となっている。

 それに対して、マクグラスの『旧約新約聖書ガイド』においては、旧新約聖書に含まれる六六の文書のすべてにわたって、ほどよく掘り下げた註解がほどこされている。

 この、「ほどよく掘り下げた」というところにこそ、本書の存在意義がある。聖書を手に取る人の多くは、独力で読み解いていくことの限界に直面するが、註釈書を手に取ってみると、あまりに詳細であったり専門的であったりして役に立てにくいという問題に直面する。だからといって、より簡単そうな概説書を手に取ると、今度はあまりにも大雑把すぎて、聖書の一節一節の的確な理解には資さないことが多い。

 それに対して、『旧約新約聖書ガイド』においては、聖書の全体に通じており、体系的な概説書を書き慣れているマクグラスが、聖書全巻についての一貫した理解に基づいて、旧約聖書冒頭の「創世記」から新約聖書末尾の「黙示録」に至るまで丁寧な註釈を順序立てて加えているため、聖書の全体についての類のない概説書として、聖書やキリスト教に関心のある全ての人にお薦めできるものとなっている。

 マクグラスの聖書理解は、特定の教派の色に染まっていない極めて穏当なものである。「穏当」と言うと、迫力のないイメージを与えるかもしれないが、我々が本書において出会うのは、キリスト教思想全体についての体系的な理解に基づいているからこそ発せられる凝縮された洞察の連鎖である。たとえば、「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった」という言葉で始まる有名な「ヨハネ福音書」の序文の註解は、「イエスが神を知らせるのは、イエス自身が神だからである」と極めて簡潔でありつつ本質を射抜いた言葉によって結ばれている。

 『旧約新約聖書ガイド』は、大部の著作であるが、極めて読みやすく、また、読者の関心に応じて、どこからでも読み始めることができる。このような稀有な聖書概説書が、本多峰子氏によるこなれた日本語で翻訳刊行されたことによって、聖書について、そしてキリスト教の教えについてのバランスの取れた理解を獲得するための最良の入口が与えられたことを祝しつつ擱筆したい。

(やまもと・よしひさ=東京大学准教授)

『本のひろば』(2018年11月号)より