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内容詳細

「子どものための賛美歌」を知っていますか?

「イエスさまって、本当にいるの?」「イエスさまもお腹が空くの?」    子どもの素朴な疑問や願い、そして受け継がれてきた信仰が紡ぎ出す「子どもの賛美歌」の世界。時代や地域を超えて愛される歌や、子どものために賛美歌を作り続ける国内外の作詞者・作曲者をめぐり、昔「子ども」だった人から、現在「子ども」たちに関わるすべての人に贈る、今回も人に話したくなる逸話満載の賛美歌エッセイ集!

【目次】
1 イェスさまいるってほんとかな/2 かみさまはのきのこすずめまで/3 イェスさまこどもを/ 4 いつくしみふかい/5 かみのおこの/6 ちいさいこどもがねむるとき/7 うれしいうれしいクリスマス/8 おほしがひかる/9 イースターのあさはやく/ 10 ちいさなかごに/ 11 このはなのように/ 12 ふしぎなかぜが/ 13 ガリラヤのかぜかおるおかで/ 14 ゆうべのいのり/ 15 しゅにしたがうことは/ 16 きょうだいげんかを/ 17 おなかのすいたイェスさまに

 

著者◇大塚野百合(おおつか・のゆり)
東京女子大学英語専攻部、早稲田大学文学部史学科、米国クラーク大学大学院修士コース卒業。イェール大学神学部研究員、恵泉女学園大学教授、昭和女子大学非常勤講師を歴任、恵泉女学園大学名誉教授。
著書に『賛美歌・聖歌ものがたり』『出会いのものがたり』『ヘンリ・ナウエンのスピリチュアル・メッセージ』『あなたは愛されています』『感動ものがたり』『「主われを愛す」ものがたり』『スザンナ・ウェスレーものがたり』『「きよしこの夜」ものがたり』『受難と復活の賛美歌ものがたり』など多数。

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書評

短くやさしい歌詞に込められた願いと祈り

塚本潤一

 キリスト教保育・教育に携わる者以外は、「子どもの賛美歌」に接する機会はほとんどない。「あれは子どもの賛美歌だから」と敬遠してしまう。著者も子どもから随分と離れてしまったから、今の「子どものことが分からない人間」だったと語る。しかしある事情をきっかけに静養を余儀なくされ、『こどもさんびか改訂版』CDを何度も聴く機会が与えられた。何度も聴くうちに著者は励まされ、慰められ、「大人の賛美歌の世界を忘れて、子どもの賛美歌を口ずさむようになり」、「子どもの賛美歌の世界の扉を開いてみたら、そこに多くの宝物のような素晴らしい歌があった」ことに気づかされた。

 こうして著者が、「子どもの賛美歌」と真剣に向き合い、自分が感銘を受けた賛美歌十七曲について自由に書いたエッセイ集が本書である。著者が感銘を受けるのは「主イエスを身近に感じさせてくれる歌」「主が私たちを愛しておられることを感じさせてくれる歌」である。十七曲の内訳は『幼児さんびか』から五曲、『こどもさんびか改訂版』から十曲、『讃美歌』『讃美歌第二編』から一曲ずつとなっている。こうして選ばれた十七曲をもとに書かれたエッセイは、それぞれが味わい深く、奥が深い。

 著者はその賛美歌を取り上げる時に、まずその歌の概説を語る。次に外国で作られた賛美歌であれば、その原曲にあたる。それを私訳して、現行の日本語訳と比較し、訳詞の素晴らしいところや、翻訳では削らざるを得なかった大切なメッセージを見いだす。そこから著者が持っている膨大な賛美歌に関する知識やネットワークを駆使して、その賛美歌の世界を大きく広げていく。言わば「子ども賛美歌」を一つの窓にして大きく広がる信仰の世界、賛美の世界へと私たちを誘ってくれるのである。

 そのために著者は独自の調査を綿密に行う。たとえば『ガリラヤのかぜかおるおかで』の作者、別府信夫についてあまりにも情報が少ない中、銀座教会へ転入会した時の魂の遍歴についての文章を見つけ出し、「信じるとは私の感じや経験にかかわらず神のみ言葉を真実の言葉として受け取ることである」という信仰的確信の元、この歌が作られたことを紹介している。

 あるいは『いつくしみふかい』の作者スクライヴンの写真を見つけて作者へのイメージが変わり、「私は頭ではイエスさまを信じているつもりですが、生きているイエスさまと親しく語り合っていないことに気づきました。あなたのおかげで大事なことを教えられて、ありがとうございます」と語りかける。

 著者はヨーロッパ・アメリカのキリスト教の衰退を嘆き、日本のキリスト教に大いに危機感を抱いている。アイザック・ウォッツの賛美歌から「私たちの賛美は形だけで、感動が欠けています。賛美の言葉は口もとでしぼんでしまい、礼拝は死んでいます」と引用し、「聖霊が世界の、日本の教会に吹き、世界が霊的生命に溢れるよう、祈りましょう」と記している。そのような中で「子どもの賛美歌」を紹介し、そこに込められたみずみずしい信仰の息吹を著者は見いだす。『こどもさんびか改訂版』しかり「これもさんびか」ネットワークしかり、それらの新しい賛美歌に「日本の教会を活性化する鍵」を見いだし、「主イエスにある望み、喜びが日本の教会にもたらされることを願って」いる。

 そして最後に『おなかのすいたイェスさまに』を取り上げ、誘惑について「自分は自分が書く本で人々から喝采を受けたいと願っていたのではないか。自分の最も霊的な行動さえもが、虚栄心に汚されていた」というカトリックの司祭ナウエンの言葉を引用し、誘惑に陥らず謙虚に生きる姿勢を新たにする。

 「子どもの賛美歌」といってあなどることなかれ。そこには、素晴らしい信仰の賛美とキリスト教の希望への扉が開かれているのだから。そして何よりも、大人も子どももみんな、「神さまの子ども」なのだから。ぜひご一読をお勧めしたい。

(つかもと・じゅんいち=日本基督教団芦屋浜教会牧師)

『本のひろば』(2018年12月号)より