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内容詳細

聖書って何が書いてあるの? 神を信じるってどういうこと? 死海写本って何? どうして愛と平和の宗教が戦争を起こすの?─そんな疑問にお答えします!聖書や信仰の基本的なことから、キリスト教が社会や文化に及ぼした影響力、そして実際に信仰をもって生きる喜びまでを丁寧に解説した充実の一冊。

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書評

現代人に人生の指針を与える書

関川泰寛著

ここが知りたいキリスト教
現代人のための道案内

小室尚子

「現代人のための道案内」という副題を付して刊行された本書は、「情報化社会の中に生きながら、人として関心を払うべき生の目的や人間の本質を問うことなく、しかし一方で確実に霊的渇きを覚えている現代の日本人に、キリスト教から提供された清涼剤」、これが本書の第一印象である。と言ってそれは決して安易な物言いではない。本書では、キリストの福音は人間にどう関わるものなのか、旧・新約聖書、歴史、人間生活を通して真に丁寧に解説されているのである。神学教師として、また牧師としての筆者の眼差しが行き届いているのを読み取ることができる。とくに「宗教」の理解が多様な日本人に対して、平易な文章で、また「キリスト教の謎」というような人々が興味を向ける項目を織り交ぜながら解説され、そうして人間存在の根本問題にまで至る内容は、人々のキリスト教への関心を引き出さないはずはないであろう。そういう意味で、巷の耳慣れたスピリチュアル事象ではなく、新鮮な本書を勧めたいのである。多くの日本人は、本当の意味でのキリスト教理解が薄い。本書は確実に、人々が知らなかったキリスト教の「新鮮さ」を現代日本人に提示してくれると同時に、こころの渇きを癒す一書であることを確信する。
また本書は、初めてキリスト教を学ぶ人々のための概説書としても適したものである。新約聖書、ルカによる福音書の冒頭「献呈の言葉」の中で、福音書記者ルカが述べる「わたしもすべての事を初めから詳しく調べていますので、順序正しく書いてあなたに献呈するのがよいと思いました。お受けになった教えが確実なものであることを、よく分かっていただきたいのであります」という言葉は、福音を伝える使命を自覚するキリスト者にとっての究極の願いが代弁されている言葉であろう。たとえばキリスト教主義学校にあって、現代の若者たちを前にして、聖書の内容やキリスト教、そしてキリストの出来事をどのように順序正しく教えるかということは教員にとって重要な課題である。順序を間違えると講義の内容すべてが雲に閉ざされてしまうようなことになるのはキリスト教を教えたことのある者ならば一度や二度は経験しているのではないだろうか。その点で本書は、教員の参考書として用いられるにも極めて整えられた内容である。先述したが、福音を核として、キリスト教の要点が丁寧に解説されている。旧約聖書、新約聖書の要点から始まり、それぞれの聖書の関係について、その上、単に聖書の概説にとどまらず、一つ一つの項目が明確にキリストの出来事と結びつけて解説されていくのである。まさに福音が通奏低音として響き、全ての項目がそれによって秩序付けられ、そこに根ざして叙述・解説がなされている。あくまでも読者を聖書のメッセージの真髄(福音)へ導いて行く構成になっている。これはキリスト教概論などを教える者にとっては大いに参考になる方法であろう。
まさにそのタイトルが示すように「ここが知りたいキリスト教」、学ぶにおいても教えるにおいても、また単に知るためだけであっても、キリスト教の基本点にはどこにでも手が届くように解説されており、それがまた信仰的理解にも至るように構成されている。キリスト教の概説書は少なくないのであるが、本書の特徴は、単なる概説書の域を越えて、キリスト教の思想の根幹を、神学的理解を通して明解に示していることである。
現代人の人生の指針を見出すために、福音を順序正しく教えて行く者のための参考書として(教員だけでなく牧師にとっても)、またキリスト教を初めて学ぼうとする人のための概説書として、推薦したい書物である。
(こむろ・なおこ=金城学院大学宗教主事)     
(A5判・二四〇頁・定価一八九〇円[税込]・教文館)
『本のひろば』(2010年12月号)より