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内容詳細

キリスト教を学ぶすべての人必携!

分かりやすさに定評のある最新の用語集、待望の邦訳! 豊富な見出し語で2000年に及ぶ神学のあらゆる重要事項を紹介。古典的な言葉も現代的関心から読み解き、難解な専門用語も要点をおさえて鮮やかに解説!

《本書の特長》

◎ 今日的な主題・視点をまじえた最新の内容。

◎ 初学者にも分かりやすい解説。

◎ 高名な著者による示唆に富んだ記述。

◎ 幅広い年代・分野の全457項目収録。

◎ 便利な日本語・原語項目索引、人名索引を掲載。

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書評

神学の学びのために、手元に置いておきたい一冊
J・ゴンサレス著
鈴木浩訳

キリスト教神学基本用語集

神代真砂実

この『キリスト教神学基本用語集』、函から取り出したところで、まず強い印象を与えられるのは、その装丁である。ハードカバーではないのだ。「ビニールクロス装」と言うらしい。ハンディな(英和などの)語学の辞典と同じようになっている、と言えば、おわかり頂けるであろうか。小さくはないが、ある程度の手の大きさがあれば、片手で開くこともできる。いや、両手を使う場合でも扱いやすく、引きやすい。この種のもので、こうした使いやすさに配慮されているのは、たいへんに嬉しいことではないか。
内容についても、使いやすさに配慮されたものだと言える。まず、これは『基本用語集』と題されている。要するに「じてん」である。今ひらがなで「じてん」と書いたのは、「辞典」とするか、「事典」とするかで、少々迷っているからであり、その筆者の迷いから、本書のイメージを理解して頂けるとありがたい。つまり、これは「事典」なのではあるが、例えば、リチャードソン/ボウデン編の『キリスト教神学事典』(教文館、二〇〇五年)に比べれば、各項目の叙述は、それこそ基本的な内容にまで絞り込まれている。他方、マッキムの『キリスト教神学用語辞典』(日本キリスト教団出版局、二〇〇二年)に比べると、項目数が少ない代わりに、そこでの叙述には、ずっと奥行きがあるという点で、単なる「辞典」の水準を超えている。「基本用語」に限定しながらも、(著者の「まえがき」にもあるように、)神学の初学者の助けとなることを意図しているという本書の特徴のあらわれと言える。
もう少していねいに見るために、例えば、「神義論」の項目を比べてみよう。マッキムの『辞典』では六行ほどの説明がなされていて、言葉の基本的な意味と、言葉そのものはライプニッツに遡ることが示されている。辞典としては、これで悪くはないが、神学を学び始めた者の実存に(と言って難しければ、「心に」でもよい)触れてくるような叙述ではない。神学は信仰に立つものであるだけに、客観的な情報だけではなく、どう信仰にかかわるのかが示される必要があるのだ。
それでは、リチャードソン/ボウデンの『事典』ではどうか。「神義論」の項目の場合、モルトマンという大御所が執筆しているのが魅力である。一頁半(しかも、字が細かい)にわたって重厚な叙述が展開されており、概念についての説明、聖書からの説明、神学史(近代以前と近代以降とに分けられている)を辿っての説明がなされている。これはこれとして立派なものであるが、少々専門的に過ぎる。叙述の中に「有神論的宗教」、「黙示主義的信仰」、「ヤハウェ資料」など、初学者がとまどいそうな言葉が含まれてしまっている。
それではゴンサレスの『用語集』は? 分量は一頁足らず(しかも字は大きい)ほどである。そして、言葉の由来についての簡潔な説明に続いて、悪の問題と、それが引き起こす困難な神学的問題、さらには従来の回答とその問題点までが的確に示されている。初学者が意味の理解に頭を悩ませなければならないような言葉も出てこない。
再び「まえがき」によれば、著者が本用語集の執筆に費やした年月は五十年だという。著者が神学を学び始めてからの歳月全てという意味のようだ。その意味からすれば、この『用語集』は神学の初学者からの質問に対して、大ヴェテランの神学教師が長い歳月をかけて蓄えた自分の膨大な知識を自由に、しかもわかりやすい仕方で提供してくれているという、教室での一場面を思い起こさせるようなものだと言えるであろう。初めに触れた、装丁のメリットも含め、神学を学び始めるにあたって、まず手元に置いておくのにふさわしい一冊である。ぜひ多くの方々に手にして頂きたい。
(こうじろ・まさみ=東京神学大学教授〔組織神学〕)
(A5判・三二二頁・定価二九四〇円〔税込〕・教文館)
『本のひろば』(2011年8月号)より