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内容詳細

ルター研究所開設25周年記念出版。本書は、ルーテル学院大学・日本ルーテル神学校図書館が神学校創立100年を記念して入手したルターの説教集の復刻版と、それに翻訳と解説を加えた小冊子を併せたものです。原本は1533年にヴィッテンベルクで印刷されたもので、トルガウの宮廷でルターがした説教が3編に収められています。内容は使徒信条の第2項の講解で、晩年のルターの円熟した説教が再現されています。翻訳と解説は、徳善義和ルーテル学院大学名誉教授によるものです。

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書評

貴重書が伝えるルターの信仰教育

マルチン・ルター著
徳善義和訳・解説

イエス・キリストについて(1533年)
復刻版と訳

徳善義和

ルターの時代に刊行されたルター自身の著作などがこの日本にどのくらい現存しているだろうか。最近も広島経済大学がルターの新約聖書ドイツ語訳の初版を手に入れ、展示されていると報じられている。ルーテル学院大学、ルーテル神学校の図書館は一九九〇年代の終わりにはプレーゲンス教授の家に伝わる初期のルター全集の一つ、イエナ版全一二巻の内の四巻を寄託されて、展示を始めて以来、そういう関係の本が集まりだしたようだ。
こうした流れの中で一昨年、一五三三年のルターの説教『イエス・キリストについて』の初版B版が、創立一〇〇周年記念の一つとして図書館に購入された。世界各地で所在が確認されている六点に加えて、七点目のものである。これを、この度大学・神学校付属ルター研究所二五周年記念出版として、その復刻版に、訳と解説の別冊を添えて、刊行した。当時の出版物、とりわけ活版印刷術の発明以来、これがマスメディアとして用いられた最初の現象である宗教改革の一端に触れていただきたいとの願いから、解説では当時の出版事情も概観した。その二〇年ほどを見ると、ルター著作の総点数が、ヨーロッパで出版された書物の総点数の過半数を占めたと推定されるのは驚きでもある。まだ識字率が低かった時代、書物が朗読されて大衆の心をとらえていく様子を想像することは、現代にとってもまた意義あることであろう。
この本は使徒信条第二項に基づき、イエス・キリストについて、選帝侯ヨハン・フリードリヒとその宮廷の前で行われた三つの説教を収める。カテゴリーとしては、ルターの教理問答説教に数えられるものの一つだが、宗教改革初期以来、一五二九年に『小教理問答』、『大教理問答』を出版する前も後も、ルターが毎年のように十戒、使徒信条、主の祈り、洗礼、聖餐という信仰の主要条項について、信仰教育の説教を多くは週日に生涯続けた事実を示す。「死に臨んでは、各自が信仰の主要条項について自分で確信を持っていなければならない」という思いからであった。現代の説教実践、信仰教育に対しても課題を投げかけてはいないだろうか。この特別な企画に関わり、訳と解説を試みた者として、日本のキリスト教界、その出版界に対して訴えたいところである。
(とくぜん・よしかず=ルーテル学院大学、ルーテル神学校名誉教授)
(A5判変型・七八+一〇〇頁・定価四四一〇円[税込]・教文館)
『本のひろば』(2011年1月号)より