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内容詳細

本邦初の日本語によるヒブル語入門書。半世紀近く親しまれてきた信頼おける内容はそのままに、基礎的な構文論や、マソラ本文に関する補説などを大幅に追加した改訂増補版。旧約聖書原典の学習者への本格的な最良のテキスト。

◎ 初学者から中級者まで広く利用できる構成。
◎ 用例にはヒブル語の聖書本文を多数引用。
◎ 各課の最後に「練習問題」を用意。
◎ 本文分析の実際を「読習脚註」で解説。
◎ 語形が探しやすい「動詞変化表」を掲載。
◎「語集」に基本語 1000語以上を採録。
◎ 便利な「事項索引」「聖書箇所索引」付き。


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書評

貴重な文法説明が加えられた学習書

左近義慈編著、本間敏雄改訂増補

ヒブル語入門[改訂増補版]

 

鍋谷堯爾

 ヒブル語は、ギリシャ語や英語のようなインド・ヨーロッパ系言語と異なり、また、日本語とも全く違っている。しかし、旧約聖書をよく理解するためには、ヒブル語(また、アラム語)の学習は不可欠である。

 四五年前の一九六六年、左近義慈編著『ヒブル語入門』が出版された。それは、父左近義弼が一九〇七年、青山学院神学部でヒブル語を教え始めてから六〇年にわたる、父子二代のヒブル語教育の結晶であった(読習、語集の部は左近淑が担当したので、三代になる)。二〇〇二年、故左近淑教授召天一〇周年記念論文集出版記念会にあたり、さらなる記念事業をということで、『ヒブル語入門』の改訂が議題とされた。日本の旧約聖書学の碩学左近家三代にわたる共編著の改訂をゆだねられた本間敏雄氏は、八年がかりで、「改訂増補版」を出版するという、日本では珍しい企画に挑戦された。「言語テクストへの密着」という左近聖書学の本質的特徴に立ちつつ、初級者にも中級者にも使用できるという幅広い視座をもって、改訂増補版を作り上げられた。

 すなわち、初級者は第1‐2課の序説についで、第3‐8課では、基礎事項を必要に応じて学び、第9‐32課に集中するようにすすめられる。初級者にも配慮して各課とも分かりやすい文章で、かなりの説明を加えたために、ページ数は倍増している。

 中級者は、各課の補注も含めて学び、旧約聖書の本文に習熟するための練習問題で力をつけ、新しく書き加えられた第10項の「文の構造(構文論)」第33‐37課に挑戦することが求められる。第10項は六八頁にも及び、一冊のまとまった書物としても十分読み応えのあるものである。参考文法書の改訂注(二二‐二三頁)を見ると、改訂増補者は最近までの文献、たとえばP. Jouon-T. Muraoka, A Grammar of Biblical Hebrew, second edition (Rome, Editrice Pontificio Istitutio Biblico, 2008)なども参照している。

 第11項の「読習脚註」では、原著の「旧約聖書の書名と配列」が第二ラビ聖書によっているのにたいし、改訂増補版では、レニングラード写本によっている。第12項「補説:本文の諸現象(補注一覧)」(三三八‐三六一頁)も、改訂増補版で書き加えられたものであり、改訂増補者が、かつてE. Wurthwein, Der Text des Alten Testaments(邦訳『旧約聖書の本文研究』)を訳したことによって判るように、写本とマソラ本文の該博な知識に裏打ちされている。「語集」は原著の七三一語にたいし、重要な人名、感嘆詞などを加えて一〇〇〇語以上を収録してある。(旧約聖書の単語数は七〇〇〇‐八〇〇〇)。また、原著になかった、便利な索引(事項、聖書箇所)が加えられている。

 ヒブル語の特徴は、とくに動詞において現われる。「動詞の変化」のはじめに改訂増補者は言っている。「ヒブル語動詞には、現在、過去、未来といった厳密な意味の時制がない。行為は、それが完了しているか、していないか。あるいは、そのように提示されているかどうかという観点から描写されている」(八九頁)。また、セム語の中でも、ヒブル語のみに見られる、ワウ継続話法、とくに、未完了ワウ継続話法を理解することが、旧約聖書の叙述文を理解していく上に不可欠である(二七一、二九〇‐二九一頁など)。また、名詞文(二四九‐二五二頁)も、他の言語にはあまり見られない特徴であって、「ハーヤー」動詞と共に、ヒブル語の世界の時間理解のため、重要な鍵となる文法的特徴である。

 これらの文法的特徴の理解は、通常、私たちの持っている直線的時間上に立つ歴史観を再考させ、旧約聖書の描き出す歴史観への新しい読み方へと導くであろう。改訂増補版の中に随所に見られるそのような貴重な文法の説明や補注が、改訂増補版という形式のゆえか、散漫化してしまって、十分にその重要性が読み取れないのが惜しまれる。

(なべたに・ぎょうじ=神戸ルーテル神学校教授)

(A5判・四七六頁・定価五二五〇円〔税込〕・教文館)

『本のひろば』(2011年11月号)より