税込価格:3850円
この商品を買う 問い合わせる
※在庫状況についてのご注意。

内容詳細

京都大学を退職後,南山大学などで教養科目として倫理学を担当し,分かり易く,興味深い講義録の集大成である。
哲学・倫理学の学識と豊かな知見に支えられた講義は,学生たちを魅了した。研究者にも有益な講義である。
第四巻では,マルタとマリアの物語と,生と死というすべての人にとって避けられない問題,謎について考察する。
第Ⅰ部は福音書にある「マルタとマリアの問題」で,受難への道を歩むイエスがマルタとマリアの姉妹の家に迎えられる。マルタはイエスの食事や接待に立ち働き,マリアはイエスの足もとに座り話に聞き入った。マルタはイエスにそれについて不満を述べたが,イエスはマリアを褒めた。この物語は,マリアを観想的生活,マルタを行動的生活として伝統的に理解されていた。しかし著者はイエスは姉妹を差別せずに,それぞれが自分を見つめて振る舞ったものとして,姉妹に等しい愛を注いだと考えたのである。
第Ⅱ部の「生と死の問題」では,人生において「死の経験」だけは経験できないため,神話で多くの物語が語られ,儀式や祭として今日まで引き継がれてきた。
そこでは身体は滅びるが,魂は不死であり永遠に生きると考えられた。身体が滅びた後には何も残らないという唯物論者による見方と,魂は存続するという見方を著者は丹念に追究する。残るのは普遍的な一つの魂か,それとも個人のための多数の魂かが焦点となった。カントの普遍的な魂を紹介するとともに,キリスト教における神の創造を基盤とする個人の存在に根差した個人の魂が残ることを明らかにする。「死の経験」とは何か,重要なテーマが問われた。

【目次】

凡例
まえがき

第Ⅰ部 マルタとマリアの問題

第一編 マルタとマリア
第一章 マルタとマリア
第二章 マルタとマリアの話についての問題
第三章 原始教会におけるマルタとマリア(一)――伝承とできごと
第四章 原始教会におけるマルタとマリア(二)――できごとの実在性
第五章 原始教会におけるマルタとマリア(三)――福音解釈の問題
第六章 『ヨハネによる福音書』第一一章におけるマルタとマリア(一)――イエスとマルタ
第七章 『ヨハネによる福音書』第一一章におけるマルタとマリア(二)――イエスとマルタの会話の検討
第八章 『ヨハネによる福音書』第一一章におけるマルタとマリア(三)――イエスとマリア
第九章 『ヨハネによる福音書』第一一章におけるマルタとマリア(四)――イエスとマリア(続き)
第一〇章 『ヨハネによる福音書』第一二章におけるマルタとマリア――イエスとマリア
第一一章 『マタイによる福音書』第二六章における類似の記事――『マタイによる福音書』と『ヨハネによる福音書』の記事の比較
第一二章 『マルコによる福音書』第一四章における類似の記事――『マタイによる福音書』と『ヨハネによる福音書』との比較
第一三章 『ルカによる福音書』第七章における類似の記事――他の三福音書との比較
第一四章 四つの福音書の記事の比較――『ヨハネによる福音書』の「マリア」と『ルカによる福音書』の「罪の女」
第一五章 聖書解釈における二つの態度
第一六章 聖書の象徴的解釈
第一七章 マリアの謎
第一八章 福音書と伝承
第一九章 四福音書の記述における相違の原因
第二〇章 塗油する女性の伝承

第二編 マルタとマリア
第一章 マルタとマリア
第二章 観想的生活と活動的生活
第三章 観想的生活の優位(1)――プラトン
第四章 観想的生活の優位(2)――アリストテレス
第五章 観想と祈り
第六章 出家のマリアと在家のマルタ
第七章 私の内なるマルタとマリア
第八章 キリスト教的共同生活におけるマルタとマリア
第九章 マルタの優位
第一〇章 マルタはマリアである
第一一章 働くことが祈ることである
第一二章 ブルジョアのマリアとプロレタリアのマルタ
第一三章 マルタはなぜ叱られたか

第Ⅱ部 生と死の問題

第一編 二つの恵み,生と死
第一講 二つの恵み
第一章 信仰と救い
第二章 二つの信仰
第三章 第二の信仰
第四章 恵みを求める信仰
第五章 恵みとそれを与える者
第六章 戻ってきた一人の信仰
第七章 感謝と愛
第八章 感謝と信仰
第九章 二つの戻り方
第一〇章 病いの意味
第二講 生と死
第一一章 生と死
第一二章 神話における死後の世界(1)――死の経験
第一三章 神話における死後の世界(2)――魂の不死
第一四章 神話における死後の世界(3)――甦り
第一五章 科学の立場から見られた生死の問題
第一六章 キリスト教の生死観(1)――生について
第一七章 キリスト教の生死観(2)――死について

第二編 生と死
第一章 生と死
第二章 生の経験と世界
第三章 死はいかにして経験されるか
第四章 死は他者の死の経験を通して知られる
第五章 自分の存在のうちに含まれている他者の存在
第六章 存在の欠落経験としての死の経験
第七章 死の経験を通しての自己の存在の再発見
第八章 死の経験を通しての世界の存在の再発見
第九章 死の経験を通して魂と身体との区別が知られる
第一〇章 他界と魂の存在についての神話の形成
第一一章 魂の起原についての神話の形成
第一二章 魂の世界についての神話の形成
第一三章 生の神秘と神話の形成
第一四章 神話形式の素材と原因
第一五章 人間の生死と自然の生死
第一六章 死者からの通信
第一七章 生死の神秘についての神話,科学,啓示の教え

第三編 魂の不死と人間の尊厳
第一章 死んだらどうなるか
第二章 死後の問題についての三つの見解
第三章 死ねばすべてなくなるという説について
第四章 この説によれば人生の意味はどのように考えられるか
第五章 この説によれば人間の尊厳はいかにして実現されるか
第六章 恵まれなかった人々は人生にいかなる意味を有するか
第七章 魂は不死であるという説について
第八章 不死なる魂についての二つの説
第九章 一つの普遍的魂が不死であるという説
第一〇章 本来の自己の自覚
第一一章 この説において人生の意味はいかなるものと考えられるか
第一二章 個人の魂が不死であるという第三の説について
第一三章 個人の魂の不死の形而上学的根拠
第一四章 魂の不死なる部分としての知性
第一五章 不死なる魂としての知性の本質と存在
第一六章 不死なる魂の創造
第一七章 創造的世界観において人生の意味はどのように考えられるか
第一八章 死後の世界

第四編 生死の問題――死んだらどうなるか
第一章 生死の問題
第二章 生の経験と死の経験
第三章 死んだらどうなるかという問題
第四章 第一の答。死んだら灰になる
第五章 第二の答。自然の生命に戻る
第六章 生命の形とはたらき
第七章 生物のはたらきの目的
第八章 個的生命と普遍的生命
第九章 第三の答。魂は不死である
第一〇章 感覚的魂と理性的魂
第一一章 理性的魂の不死
第一二章 不死であるのは普遍的理性か個的理性か
第一三章 死後の魂についてのキリスト教の説

あとがき
解説
索引

※教文館出版部の出版物については「出版部」の商品ページに在庫表示がございます。