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内容詳細

「健やかな教会」を建てるにはどうすればよいのか?

伝道、説教、礼拝、信条、教会政治から、伝道者養成や教会の政治的・社会的責任に至るまで、教会の今日的課題に取り組んだ8編の講演を収録。
改革派・長老派教会の伝統と神学に立脚しながらも、何よりも聖書から、混迷の時代を生きる教会への確かな指針を告げる。

「本書を通して私が一貫して追求しているのは『健やかな教会をいかにして作るか』ということです。……健やかであれば命が成長し、実を結びます。そこには喜びと慰めが満ち溢れます。この世で教会だけが提供できる恵みがあるのです。教会が健やかであれば、この世の人たちはその魅力を感じないはずはないと私は思っています。伝道の鍵もそこにあるのではないでしょうか」(あとがきより)

【目 次】

キリストとの出会い──自伝的伝道論

 1 救いの証し
 2 教会の伝道
 3 信徒の伝道
 4 家庭による伝道

日本キリスト改革派教会の課題と展望

 1 信条における課題
 2 伝道における課題
   ⑴ミッション協力の大切さ
   ⑵超教派的伝道協力の必要
   ⑶伝道における信徒の働き
   ⑷伝道者の問題
   ⑸礼拝・説教の課題
   ⑹伝道の方法に取り組む必要
 3 長老制組織の課題
 4 教会と国家にかんする信仰の宣言
 5 最後に──健やかな教会をめざして

教会政治を考える──長老主義とは何か

 1 教会とは何か──教会政治はなぜ必要なのか
 2 聖書と長老主義
   ⑴長老たちによる統治
   ⑵二種類の長老
   ⑶執事職の存在
   ⑷教会会議の段階的構成
 3 長老主義の歴史的起源
 4 ウェストミンスター神学者会議における長老主義
 5 おわりに

長老主義教会の課題

 1 はじめに
 2 長老主義の諸原則
 3 中会とは何か
 4 日本における長老主義
 5 長老主義教会の今日的課題
 6 最後に

伝道者の養成について

 1 これまでの牧師・伝道者養成の概観
   ⑴岡田稔──「神学校は伝道の最短距離」
   ⑵吉岡繁──霊的訓練の必要性
   ⑶橋本龍三──内外の多様な人材による神学教育
   ⑷牧田吉和──「神学と伝道の祈祷における統一」
   ⑸市川康則──説教者養成への集中
   ⑹吉田隆──「魂の医者を育てる」
   ⑺教職養成問題検討特別委員会(一九八七─一九九一年)
 2 牧師・伝道者に求められていること
 3 いかにして牧師・伝道者を育てるか
 4 おわりに

教えるということの歴史的考察──アウグスティヌス、カルヴァン、トマス・チャーマーズ、そして現代

 1 はじめに
 2 アウグスティヌスの「教師論」──教育哲学
   ⑴「教師論」とは
   ⑵「ことば」によって教えることは可能か
   ⑶真の教師とは誰か
   ⑷教師の役割とは何か
 3 カルヴァンのジュネーヴ・アカデミー──人文主義教育
   ⑴人文主義とは何か
   ⑵ジュネーヴ・アカデミーの設立
   ⑶ジュネーヴ・アカデミーの教育
   ⑷ジュネーヴ・アカデミーの今日的意義
 4 トマス・チャーマーズのニュー・カレッジ──長老主義神学校
   ⑴トマス・チャーマーズと大分裂
   ⑵ニュー・カレッジの設立とその教育
   ⑶ニュー・カレッジの今日的意義
 5 現代の諸課題
   ⑴アリスター・E・マクグラス『宗教教育を語る──イギリスの神学校はいま』
   ⑵日本カトリック神学院の養成理念と指針
 6 最後に

聖書からキリスト者と教会の政治的・社会的責任を考える

 1 はじめに
 2 聖書から学ぶ
   ⑴キリスト者とは何か
   ⑵国家とは何か
   ⑶教会とは何か
 3 私たちが直面している現実──「自民党憲法改正草案」
 4 政治的リアリズム
 5 最後に

国家に対するキリスト者の良心

 1 良心とは何か
 2 聖書における良心
 3 日本国憲法における良心
 4 教会における「良心の自由」
 5 教会における「良心」の今日的意義
 6 今、為政者が目指していること
 7 まとめ

初出一覧
あとがき

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書評

「健やか」な教会を建て上げるにはどうすればよいのか? 

関川泰寛

 

 本書は、日本キリスト改革派教会の神戸改革派神学校教援袴田康裕氏による講演集です。「キリストとの出会い」という個人の救いの経験から始まって、「日本キリスト改革派教会の課題と展望」、「教会政治を考える」、「長老主義教会の課題」、「伝道者の養成について」など、どの講演も現代日本の教会の喫緊の課題を取り上げて、分かり易く論じています。その論じ方は、教派教会の弁証には走らず、むしろ普遍的な信仰や神学の課題を扱っているので、伝道と教会形成に関心を持つすべての牧師と信徒に必読の書と言えるでしょう。
 全体から、日本に健やかな教会を形成するために伝道したいという熱意が伝わってきます。読んでいて私自身が共感し、皆様にもお伝えしたい本書の論点を要約する形で紹介してみましょう。
 第一に、教会の伝統について、袴田氏は、変えてはいけないものと変えるべきものをしっかり識別するように勧めています。日本の改革教会は、聖書と並ぶ伝統の意義をはき違えて、いわゆるこれまでの教会の慣習を墨守することを伝統の保持と考えている場合が少なくありません。真の伝統は、信仰告白そのものの讃美・頌栄というダイナミズムと密接な結びつきがあるゆえに、伝統を保持すること自体が、教会を御言葉によって刷新する力となります。
 第二に、教職者のみならず信徒の伝道力の回復の必要性です。いまだに教会では、わたしたちはお客さんという姿勢が見られます。お客さんでは、主のために奉仕する志は湧き上がりません。自分がクリスチャンであることをしっかり証して現実を生きる時、「ハプニング」が起こります。「ハプニングとしての伝道」をせよとの興味深い指摘もあります。わたしは、袴田氏の議論に全面的に共感します。伝道すると奇跡が起こる、これはすべて伝道に召されている者の経験的な実感でもあります。
 第三に、信仰告白の意義の再認識が促されています。信条や信仰告白は、持っているだけでは意義がありません。そこに示された教理の深みと讃美・頌栄としての意義を認識して、牧師と信徒が奮い立つ経験が求められています。
 第四に、神学校教育の重要性です。袴田氏は、「伝道者の養成について」という章を設けて、神戸改革派神学校の歴代校長の教育理念を紹介し、さらにキリストの三職から、今牧師・伝道者に求められている課題を論じています。現代日本の神学校が、神学的な考察や能力の涵養のみならず、将来牧師となる伝道献身者の霊性と道徳的な成長をも担うべきことが示されていて、大きな共感を持って読みました。また、「教える」ということの歴史的考察の章では、アウグスティヌス、カルヴァン、そして一九世紀のエディンバラ大学の神学教授にしてニューカレッジの創設にあたったトマス・チャーマーズの教育論を紹介しながら、神学校と神学教育の現代的な課題を論じています。特に今まであまり紹介されることのなかった、スコットランドの教会分裂と神学教育の分かり易い解説とニューカレッジの神学教育の特徴の紹介は、有益で新しい知識を読者に提供するでしょう。
 最後に、改革教会は、国家の問題を、単なる社会問題としてではなく、信仰の問題として取り組んできたことが指摘されています。袴田氏は、信仰の問題としての政治の問題が具体的には複雑で多岐にわたっていることを認めながら、現代日本の政治の評価にまで踏み込んで議論しています。評者の立場は、袴田氏とは随分違っているので、この問題への切り込み方や論じ方には、なお不満もありますが、改革教会の伝統から、政治と信仰の問題を切り離すことなく論じる姿勢からは、おおいに学ぶことが出来るでしょう。いずれにしても、現代日本の伝道と教会の形成をまじめに考えている方々に推奨することができる一冊です。

 

(せきかわ・やすひろ=東京神学大学教授・大森めぐみ教会牧師) 

『本のひろば』(2017年7月号)より