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内容詳細

人生の意味とは何か?──
(『ジュネーヴ教会信仰問答』問1)

カルヴァン神学の要点を、主著『キリスト教綱要』に添いながら、信徒向けに分かりやすく解説。
16世紀の激動の時代に、人間の魂と教会と世界を建て上げるために生きた彼の思想を、混迷の中を生きる現代人への挑戦として読む。

「本書の各章は、いわば食前酒にすぎず、正式の食卓へのご招待である。すなわち、私は、カルヴァンの神学がもつ意義は、21世紀の教会においてもなお常に新しいことが明らかになりうること──あるいは少なくともカルヴァンの神学的な認識は、今日、別の仕方で語ることを挑発している、という前提で本書を執筆しているのである」(「まえがき」より)

【目次】

まえがき

第1章 カルヴァンの生涯

 1 ジャン・カルヴァン、ジュネーヴの独裁者?
 2 子供時代と学生時代
 3 宗教改革への回心
 4 第1回および第2回ジュネーヴ滞在
 5 ジュネーヴ教会の建設
 6 カルヴァンの晩年

第2章 神を認識することと自己自身を認識すること

 1 人生の営みとしての神認識と自己認識
 2 神認識は、どこで、どのように行なわれ、そこでは何が認識されうるのか
 3 神は自らを認識させる
 4 われわれは、われわれ自身を認識する
 5 神に栄誉を帰することとしての神認識と自己認識

第3章 神の言葉の告知としての聖書

 1 聖書の権威
 2 聖書、神の言葉そして教理
 3 旧約聖書と新約聖書の関係について

第4章 三位一体の神の本質と働き

 1 神はいかなる類概念でもない
 2 父も子も聖霊も、それぞれ神として示されうるのか
 3 神の一性から出発する場合でも、父と子と聖霊は、どの程度区別されうるか
 4 神が隠れていることと神が近いことの表われとしての三位一体論

第5章 神の創造者の働きに対する驚嘆

 1 創造における神の足跡と曇らされた目
 2 福音における被造物への道
 3 創造の神学の輪郭

第6章 罪──人間の神からの疎外および自己自身からの疎外

 1 不信としての罪が神からの疎外である
 2 罪は信じられうるが、見られえない
 3 人間はキリストにおいて自己自身に立ち返る

第7章 イエス・キリスト──王、祭司、預言者。イエス・キリストの三職に関するカルヴァンの教説

 1 イエス・キリストの三職に関する教説とイエス・キリストの人格と業は相互に結びついている
 2 キリストの王としての職務
 3 キリストの祭司としての職務
 4 キリストの預言者職

第8章 キリストから理解されるべき律法は認識と生活の助けをもたらすこと

 1 律法──キリストからキリストへ
 2 律法の務め
 3 律法はわれわれの不義を映す鏡である
 4 律法は公共の共同体を秩序づける
 5 キリスト者の男女は、喜んで神に服従しようとし、律法が彼らに役立つこと

第9章 聖霊の主要な業──信仰

 1 信仰は、聖霊によって一方的に開始し、同時に隠された伝達の行為であること
 2 信仰は、キリストと人間との贈与された交わりを示す
 3 信仰は認識と確信であり、心と知性を包含する
 4 信仰の質とは、キリストの恵みの業の認識であり、キリストの恵みの業への信頼である
 5 天国への道としての信仰

第10章 神の選びの働き

 1 選びは信仰に先立つ
 2 神の決定は見通すことができない──それでも正しい
 3 神の選びは応答を呼び起こす
 4 神の選びは遺棄を含む
 5 神の選びは確信を目的とする

第11章 神の聖化の働き

 1 さまざまな挑戦
 2 キリストとの交わり
 3 聖化の諸側面

第12章 神によって選ばれ、そして形成されるべき教会

 1 教会は神によって選ばれていること
 2 可視的な教会と不可視的な教会
 3 キリストのからだとその一性
 4 教会への帰属
 5 教会のしるし
 6 各個教会における諸規定
 7 戦う教会と庇護されている教会

第13章 神の全体的な教育学──補助手段としてのサクラメント

 1 「すべてのサクラメントの実体」としてのキリスト
 2 洗礼の約束
 3 聖餐の約束

第14章 人間性を保護育成するための神の指図としての国家

 1 教会と国家の相違
 2 国家の使命
 3 国家の責任
 4 国家に関する教会の使命

第15章 完成へのあこがれ

 1 イエス・キリストの再臨
 2 完全な交わり
 3 霊魂の不滅
 4 来たるべき生の瞑想

訳者あとがき
図版および出典
参考文献

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書評

現代人はカルヴァンをどう読むのか?

佐藤司郎

 今年は宗教改革五〇〇年、一般にはルター五〇〇年のように受け取られているけれども、そしてそれには違いないが、もっと広い意味で、ルターに始まった宗教改革を想起し、われわれの今日の諸課題とともに改めて考えてみるというのが、本来期待されていることであろう。

 そうした意味でこのたびゲオルク・プラスガーの『カルヴァン神学入門』が刊行されたことは時宜を得たことであり、われわれは宗教改革の広がりを確認するよい手引きを与えられたことになる。

 著者のゲオルク・プラスガーは一九六〇年生まれで、ドイツのジーゲン大学教授。改革派神学のすぐれた研究者として活躍している。カール・バルトに関する研究も少なくなく、昔ゲッティンゲンで礼拝をご一緒したこともある。堅実な研究には定評がある。

 本書は全部で一五章からなり、第一章で「カルヴァンの生涯」の要点をたどったあと、残り一四章で、おおむね主著『キリスト教綱要』にそって、その神学全体を簡潔に、しかし的確に解説したものである。『綱要』以外のカルヴァンの多くの著作を引照しながら主題の解明を試みる。現代の諸問題との関連を語るところは多くないが、論述の隠れた視点としてそうした今日のわれわれのいだく問いが取り上げられ、ひそかな対話が試みられていることは明らかである。

 一四章のテーマは以下の通り。

第二章「神を認識することと自己自身を認識すること」。
第三章「神の言葉の告知としての聖書」。
第四章「三位一体の神の本質と働き」。
第五章「神の創造者の働きに対する驚嘆」。
第六章「罪——人間の神からの疎外および自己自身からの疎外」。
第七章「イエス・キリスト——王、祭司、預言者。イエス・キリストの三職に関するカルヴァンの教説」。
第八章「キリストから理解されるべき律法は認識と生活の助けをもたらすこと」。
第九章「聖霊の主要な業——信仰」。
第一〇章「神の選びの働き」。
第一一章「神の聖化の働き」。
第一二章「神によって選ばれ、そして形成されるべき教会」。
第一三章「神の全体的な教育学——補助手段としてのサクラメント」。
第一四章「人間性を保護育成するための神の指図としての国家」。
第一五章「完成へのあこがれ」。

 この中で私には冒頭の第二章「神を認識することと自己自身を認識すること」が、今更ながらかも知れないが、一番面白かった。

 神を問うことは、人が自分の実存を問うことと無関係にはなされない。人文主義者であったカルヴァンのこうした視点は今日のわれわれに示唆するところ大きい。プラスガーは、「両者は互いに関係し、そのつど互いに一方が他方を生み出すのである」(三三頁)と説く。まさにその通りであろう。われわれも礼拝に参加し、聖書によって神のことを聞きながら、そこで本当の自分と出会うことをしているのではないだろうか。そしてそれによってまたわれわれは神に栄誉を帰し、神を仰ぐことへと導かれる。

 一つ一つのテーマについてみんなで語り合いながら学んでいくテキストとしても本書は相応しい。訳者の労に感謝し、大いに用いられることを願ってやまない。

(さとう・しろう=東北学院大学教授)

『本のひろば』(2017年10月号)より