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内容詳細

本書はペルソナ・人格の存在論的構造を徹底的に分析、トマスの存在論的な人間論の構造を、「存在の充実」という観点から認識論と存在論の統一的視点で解明し、「人格の存在論」を構築する。「ペルソナ」概念は三位一体論やキリスト論の神学的主題であり、トマスも主にそのような文脈で使用するが、人間についてはその自立性と一性を存在論的に説明するときに使用された。

トマスはペルソナを、完全性と全体性という特質を持ち、理性的な本性において自存する個体と規定する。最も完全なものであるペルソナには「存在の十全性」と「目的との関係」の二つの完全性が帰属するが、それは人間が孤立して完全性を生まれながらに持つのではなく、自らの外にある目的との関係、目的思考的なあり方をとおして獲得するものである。人間存在は自己完結的ではなく、他者と世界との関係形成をとおして自己自身を乗り越え新しい自己を形成していく。そこには「存在する」こと自体がもつ力動性が前提されている。

トマスの人間論はアリストテレスやキリスト教の人間論と連続するとともに、ペルソナ・人格の自立性・自律性という近代的な人間論の萌芽として捉えることもでき、ルネサンスにおける個の誕生という通念では説明できない中世の新しい側面が明らかにされる。

倫理学と存在論の相互連関の観点から、トマスのテキストの厳密で正確な読解と現代的意義の探求を兼ね備え、創造的な再解釈に挑んだ画期作。

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