ロジャー・デュボアザンといえば『ごきげんならいおん』や『がちょうのペチューニア』、『みんなのベロニカ』などの動物が主人公のユーモラスな絵本をすぐに思い浮かべると思います。それらの作品とは一線を画した1966年コールデコット賞受賞作『きりのなかのかくれんぼ』が、初めて日本に紹介されました。ずっと以前にこの絵本を洋書で見たことがあり、「なんて美しい絵本だろう」と思っていたのですが、英語なので内容までは分からず…。霧に包まれた海辺の町の3日間を描いた作品ということが、翻訳出版でようやくわかりました!
ある時突然やってきてすべてを包み込み、そして不意に去ってゆく霧――大事件は起こりませんが、自然の力とそれに逆らわずに生きる人々の営みが静かに描かれるデュボアザンの絵本を、ぜひご覧ください。

『きりのなかのかくれんぼ』A.トレッセルト 文/R.デュボアザン 絵/片山令子 訳/復刊ドットコム 1800円+税