クリーンヒット ⚾ ノンフィクション
『ケアしケアされ、生きていく』
竹端寛 著
筑摩書房 刊
2023年10月10日 発行
946円(税込)
199ページ
対象:中学生から

他人に迷惑をかけていい!

「ケア」と聞いてイメージするのは「弱者のための特別な営み」という人が多いのではないでしょうか。病人とか障害者とか。でも、著者は言います。日常生活が滞りなくスムーズに回っているのは、意識しないところで誰かの「ケア」を受けているからだと。わかりやすく家庭のなかのことで言えば、洗濯物や洗いものがたまっていないで片付けられている、洗剤やトイレットペーパーのストックが買い揃えられているなどのことは、誰かが気にかけているから維持されているとのこと。身の回りにはたくさんの「ケア」があるのです。なるほどな、と思います。
このことを見据えたうえで「ケア中心の社会とは何か」を考える1冊です。

目次を見ると「第1章 ケア? 自分には関係ないよ!」として「「迷惑をかけるな憲法」」「しんどいと言えない」などの項目があり、「第2章 ケアって何だろう?」「第3章 ケアが奪われている世界」「生産性至上主義の社会からケア中心の社会へ」の章立てで丁寧に解説していきます。著者自身の反省をこめた実体験の文章が身近なかんじで親近感と説得力があり、いちいち頷きながら読んでいました。
著者は子どもができてから、意識が変わったと言います。ああ、人はこんな風に変わることができるのかと感動しました。詳しくはぜひ、読んで確かめていただきたい!
今の世の中、他人に迷惑をかけないことに気をかけすぎて息苦しく、自分らしくいることが難しい。でも、もっと他人を頼っていい社会の在り方があると言います。

「ケアし、ケアされ」ていく社会が実現すれば、多くの人が自然体でいられる、息のしやすい暮らしができるようになるのだなと思いました。  (す)

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