【たくさんのふしぎ40th】🤔(2023年9月号)
『「植物」をやめた植物たち』
末次健司 文・写真
福音館書店 刊
2024年11月 発行
1430円(税込)
40ページ

植物って何だろう? 光合成をしない奇妙な「植物」たち

みなさんが思い浮かべる植物の特徴は何でしょうか。恐らく、緑の葉がついていること、ではないでしょうか。確かに地球上で発見されている約30万種の植物には葉っぱがあり、光合成をすることで自ら養分を作り出します。ですがその中のおよそ1000種は光合成をしない植物で、他の生き物を「食べて」生きています。

光合成をする植物も自分だけで自活しているわけではありません。キノコやカビなどと共存して生きています。キノコをつくる菌類は、常にキノコの形をとっているわけではなく、菌糸という糸状の組織を土の中に張り巡らせています。そして植物の細い根に入り込み、光合成によって得た糖やでんぷんをもらう代わりに、土の中で得られる窒素、リン、カリウム、水などを与えています。理想的な共生の形ですね。一方、光合成をしない植物は菌類の養分は受け取りますが、自分の養分は菌類に与えません。そればかりか、接触してきた菌糸を消化し、その菌類が光合成をする植物から受け取ってきた糖やでんぷんも自分のものにしてしまうのです…!また、光合成をやめた植物は、菌類から横取りできる養分に限りがあるので、普通の植物のように子孫を残すためのりっぱな花や果実を作ることができません。では、彼らは子孫を残すためにどのような工夫をしているのでしょうか?ぜひ本書をチェックしてみてください。

本書でご注目いただきたいものは、不思議な植物の生態だけでなく著者末次健司氏による植物たちの姿を収めた写真です。光合成をする必要のない植物は葉緑素のある葉っぱをもつ必要がありません。そのため、驚くほどカラフルなものや奇妙な形のものなど、様々な種類の植物が存在します。また、普通の植物が生育できないような非常に暗い森林の中でも生きることができます。著者はこうした植物を研究するために、文字通り山中を這いつくばって研究しているのだとか!研究への熱意に圧倒されてしまいます。

光合成をしない不思議な植物は、一見すると他の生物に寄生するずる賢い生き物です。ですが寄生している分、危うさもあります。寄生主の存在に自分の存在が委ねられているからです。彼らの存在は私たちに植物とは何か、そして、他の生物と関わり合って生きるとはどういうことなのかを私たちに問いかけます。(ほ)

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