【たくさんのふしぎ40th】🤔(2003年12月号)
『好奇心の部屋デロール』
今森光彦 文・写真
福音館書店 刊
2008年11月20日 発行
1430円(税込)
40ページ

博物館のようなお店、デロール

タイトルを目にしたとき、まず思ったことは「デロールって何だろう?」ということでした。
デロールとは、フランスの首都パリにあるお店の名前「DEYROLLE(デロール)」のことで、今から170年以上も前の1831年、ジャン・バプティスト・デロールという人がつくったお店です。どんなお店だと思いますか?
本書を手掛けた今森光彦さんは、パリの静かな道を歩いていた時にこのお店を発見したのですが、その出合いは衝撃的なものでした。洋服屋や雑貨屋、カフェなどがひしめきあうように並んだ道すじのショーウインドウの中に、とつぜんライオンの姿が見えたのです……! ライオンはゆったりとすわり、獲物をねらうような鋭い目で、外をにらみつけていました。といっても、もちろん本物ではなく、その正体は剥製。「デロール」とは、剥製などを売る”博物館のようなお店”で、店内には、シロクマ、シマウマ、スイギュウ、キツネ、ロバ、ウサギなど、世界各地からやってきた多くの動物たちの剥製が勢ぞろいしていて、まるで生きているかのように”自然なポーズ”をしているそう。写真を見ているだけでも、息づかいが聞こえてくるようです。

なぜ、このようなお店が誕生したのでしょう?それには「時代」が関係していました。デロールができた19世紀は、ヨーロッパの人びとの自然への関心がとくに高く、生きものの個性あふれる美しさに目がむけられた時代。たくさんの船が、生きものや天文などの調査をするため未知なる国への大航海に出発し、ヨーロッパの人びとが目にしたことのない動植物が、アジアやアフリカから持ちこまれました。しかし、持ちこまれた動植物の種類を判別するためには、その形や大きさなどを細かく調べなければなりません。また、当時はまだ写真が発明されておらず、大量に印刷する技術もありません。そこで、活躍したのが剥製だったのです。

「DEYROLLE(デロール)」では、ほかにも昆虫や植物、骨の標本や、世界中から集められた石、貝もあります。また、お店のスタッフが自然や生きものについて教えてくれることから、子どもたちにとっては学校のような存在でもあるそう。本物のライオンやシマウマを触ることはできないけれど、デロールでは、間近で見て、触れることができると思うと、魅力的ですよね。自然や生物について興味がある子どもはもちろん、大人にも読んでほしいです。剥製とはいえ、動物たちの眼差しを見つめていると、声なき声が、聞こえてくるかもしれません。(み)

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