【たくさんのふしぎ40th】🤔(2016年11月号)
『わたしたちのカメムシずかん』
鈴木海花 文
はた こうしろう 絵
福音館書店 刊
2020年5月25日 発行
1430円(税込)
40ページ

やっかいものが宝ものになった話

カメムシと聞いて、まず思い浮かぶ印象は”マイナスイメージ”ではないでしょうか。
本書の舞台である、岩手県の葛巻町に住む人たちにとっても、それは「やっかいな虫」。畑では、稲や枝豆といった農作物を食べてダメにしてしまいますし、ホテルでは、秋になるとカメムシが部屋に入りこむことで、お客さんから「臭い部屋にとめられた」と苦情がくることがあります。
しかし、葛巻町にある、ちいさな小学校に通う子どもたちにとって、カメムシは「宝もの」。この違いは、何でしょうか?
子どもたちも、最初から好きだったわけではありません。体育館をつかう日は、まず床のカメムシを念入りに掃除しなくてはいけないですし、最も多い時期なんて、はき集めたカメムシがゴミ袋4つぶんになることもあるそうです。
でも、校長先生のアイデアがきっかけで、みんなの思いは少しずつ変わり始めました。校長先生は「カメムシ」に色々な種類がいるということに着目し、見つけたら写真をとり、図鑑で名前をしらべ、見つけた日時や場所、気がついたことなどの記録とともに、標本としてポリ袋にいれたカメムシを廊下の壁にはりだすことを提案します。
春から調査を始めて、夏休みに入る頃には、すっかりカメムシと「顔みしり」に。名前が言えるようになったのです。冬には、廊下にはりだされた種類が30をこえ、子どものひとりが、こう言いました。「カメムシはぼくの宝ものだねっ」。
その言葉を聞いた校長先生は、自分たちが見つけたすべての種がのっている、手づくりの「カメムシずかん」を作ることを考え、実行に移します。種類の正確性を調べるため、ふたりの研究者が葛巻にきて調査をしてくれることになり「カメムシずかん」は完成に至りました。素晴らしい!

やっかいものだったカメムシでしたが、よく「知る」ことで「宝もの」に変わったという事実に、感動を覚えました。これは虫に限った話ではなく、さまざまなことに共通することだと思います。人生、「きらい」が多いより「すき」が多いほうが楽しいです。「知る」ことって、とっても素敵なことだなと、改めて感じる作品でした。(み)

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