ベスト👍 ノンフィクション
『もしも君の町がガザだったら』
高橋真樹 著
ポプラ社 刊
2025年7月 発行
定価1980円(税込)
295ページ
対象:中学生以上
ガザから世界を見てみると、ちがう景色が見えてくる。
2023年10月7日以降、日々ニュースで流れてくるパレスチナのガザ地区の惨状に「なぜこれほど残虐な攻撃を止められないのか」と無力感に囚われている方も多いと思います。「2000年に渡る宗教間・民族間の対立」や「憎しみの連鎖」などのニュースの言葉を聞くと、あまりにもこの問題は深くて難しく、自分の手には負えないと思ってしまいますが、実はそうした定型文が誤った認識を私たちに与えていること、そして本当のパレスチナ問題とは何なのかを、著者は丁寧に解説していきます。
なぜ2023年10月7日の襲撃が起こったのか、それを正しく理解するためにはこの地の時計の針を19世紀末まで戻す必要があります。なぜならオスマン帝国の時代までは、この地に住むさまざまな民族・宗教の人々は争うことなく隣人として暮らしていたからです。パレスチナが対立の現場となってしまったのは、ロシアを含むヨーロッパで長く行われた根深いユダヤ人差別(反ユダヤ主義)が遠因で、その問題をパレスチナに持ち込んだヨーロッパの責任が大きいということを、今現在起こっている戦闘だけを見ていては理解するのは難しいのです。そこで、著者はパレスチナ問題を難しく見せている様々な要因を解きほぐし、「ひどい」「かわいそう」という共感を超えた先にある「人々を苦しめている世界のしくみ」を読者が理解できるように、論点を整理しながら導いていきます。
章の冒頭にあるたとえ話(もし君の町が〇〇だったら……)は、パレスチナの人々の置かれた現状がいかに理不尽であるかを、子どもたちが自分ゴトとして想像できるように書かれています。そして、イスラエルの側からの視点も持つことで、なぜイスラエルの市民はこのような状況を支持し続けるのかといった、多くの人が持つ疑問にも一つの回答を与えてくれます。パレスチナで起こっていることは一部の地域の問題ではなく、「暴力の支配(差別や人権侵害)vs法の支配(国際人道法)の争い」という普遍的な問題であり、私たちも無関係ではいられないのです。
著者は最後に読者に語りかけます。
「パレスチナ問題をこのままにしておくことは、僕たちの住む世界が、くらしにくくなるということでもある。国際法ができる前の、植民地の時代と同じように、むき出しの暴力で強者が弱者を支配する世界を許すことになるからだ。―(中略)― ガザかイスラエルか、その二つしか選べない世界で、君は生きていきたいだろうか?」
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