【たくさんのふしぎ40th】🤔 (2012年4月号)
『ゴリラが胸をたたくわけ』
山極寿一 文
阿部知暁 絵
福音館書店 刊
2015年9月5日 発行
1430円(税込)
40ページ

心やさしいゴリラたちのふしぎな世界

ゴリラを含む霊長類研究の第一人者と、ゴリラの画家が描く愛情いっぱいのゴリラの絵本。

著者は長年アフリカでゴリラたちを観察してきました。その中で「戦いの宣言」と考えられていたゴリラのドラミング(胸を叩く動作)について疑問を覚えます。なぜなら、群れのリーダーであるシルバーバック(背中に輝く白い毛がある13歳以上のオスゴリラ)がドラミングを始めても、メスや子どもたちはその周りでのんびりと草を食べ続けていたからです。敵が近くにいたらこんな悠長に構えていられるはずがありません。さらに観察を続けていくうちに著者は、オスのドラミングは遠くの群れと通信をする手段なのではないかと気づきます。それに、ドラミングをするのは何もシルバーバックに限ったものではありません。遊びの中でゴリラの子どもたちは度々胸を叩く動作をします。それは人間の子どもたちが言葉を交わしながら遊んでいる様子にとても良く似ていました。ドラミングは楽しい気持ちを相手に伝えるための方法でもあったのです。

大人のオスともなれば身長は180センチメートル、体重は200キログラム以上にもなるゴリラですが、彼らは進んで争うことをしません。むしろ争いを避けるためにドラミングを使って上手に自己主張をし、お互いに気持ちを伝えあっているのです。つまりドラミングは「戦いの宣言」ではなく「平和のしるし」だったのです。

ゴリラという素晴らしく賢くて愛情深い動物がこれからもアフリカで確かに生き続けるためには、彼らに対する正しい知識を持つと同時に生息環境を守っていかなければなりません。この作品は子どもたちがゴリラを好きになり、その先の一歩を踏み出すための大きなきっかけを与えてくれることでしょう。(か)

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