
ベスト 👍 ノンフィクション
『炎はつなぐ めぐる「手仕事」の物語』
大西暢夫 著・写真
毎日新聞出版 刊
2025年6月30日 発行
2750円(税込)
429ページ
対象:大人
日本の技術と文化を支えてきた伝統工芸の職人技
夏に公開された長編ドキュメンタリー映画「炎はつなぐ」の原作本。
写真絵本『和ろうそくは、つなぐ』の世界をより深く知ることができる1冊です。
読まなくちゃ、と思いつつ、なんとなく先延ばしにしていたのですが、手にしてみて冒頭から一気に引き込まれました!
なんで延ばしていたの?と自分にツッコミをいれながら(笑)、読み始めると、これまでなんとなくでしか知らなかった壮大な世界が現れました。
時代の荒波を乗り越え、何代も続く手仕事は地道で、決して派手さはないけれど、人が生きるってこういうことかも、と納得させられます。
見事なまでに職人の仕事が連続していくので、読みながらずっと驚いていました。
タイトルのとおり、手仕事が「めぐる」のです!
和蠟燭(わろうそく)職人、木蝋(もくろう)職人、藍染(あいぞめ)職人、小鹿田焼(おんたやき)、藍甕(あいがめ)、藍師(あいし)、米農家、和紙職人、ミツマタ農家etc.etc.
ほとんどどの職人もレッドデータ、です。ひとつの仕事がなくなると、ほかの職人仕事もなくなってしまうかも、という綱渡り状態。でも、というか、だからこそというか、どの職人も誇りをもっているように感じました。
とはいえ、肩ひじはったかんじはなく、実にフラットで自然体なのが、かっこいい!
著者は次第にその仕事に魅了され、仕事の域を越えて自らの興味に従って、手仕事を追っていくようになります。その感覚は読んでいて、なんとなくわかるかんじがしました。今、見ておかないとという切迫感と、好奇心を刺激されて止まらなくなるような。違っていたら、ごめんなさい。でも、わたしはそんなふうに感じました。
どこにも無駄がない、ゴミが出ない。終わりは当たり前のように自然にかえっていくーーそんな仕事。
昨今、SDGsとか、持続可能なんとかって声高に言ってるけど、昔からの仕事の仕方って、特別でもなんでもなく、そういうふうになっていたんだなって思えます。
ヒトも自然の一部。今、大騒動になっているクマ問題も根っこは一緒かなあとも。
どの仕事もなくなってほしくない、なんて勝手なことを思って本を閉じました。映画もチャンスがあれば、観てみたいです。 (す)
★ご注文、お問い合わせはお電話、Fax、メールにて承ります★
売場直通電話 03-3563-0730
Fax 03-3561-7350
メールでのお問い合わせは下記のフォームからどうぞ。


