【たくさんのふしぎ40th】🤔(2013年9月号)
『生きる』日本傑作絵本シリーズ
谷川俊太郎 詩
岡本よしろう 絵
福音館書店 刊
2025年1月1日 発行
1430円(税込)
43ページ

「生きているということ いま生きているということ」

絵本を開くと、木にとまった、セミの姿が目に映ります。
次のページをめくると、セミは地面の上で天を仰ぎ、アリが群がっていて、それを眺めているであろう、少年の足元と影が見えます。確かにあったいのちが消え去った、その儚さが描かれたページには「生きているということ いま生きているということ」ということばが添えられています。詩人・谷川俊太郎さんの『生きる』という詩の、はじまりのことばです。

「生きているということ いま生きているということ」から始まる詩に続くのは「それはのどがかわくということ 木漏れ日がまぶしいということ」ということば。谷川さんは、大きな事柄ではなく、日常のささやかなことを「生きている」ことだと表現していて、「ふっと或るメロディを思い出す」こと「くしゃみをする」ことも、生きることだと教えてくれます。

絵本の冒頭で、セミが一生の終わりを迎えたのを見つめていた少年は「いま」を生きていますが、その少年にもやがて「死」が待っています。この世に生まれた誰もが、やがて「死」へと向かう。どんなに地位が高い人にも、平等に訪れる現実です。人生は永遠に続くように錯覚しがちですが、命には限りがあることに気がついた時、「いま、この瞬間」を強く意識するのかもしれません。 しかし、人はどれだけ「いま」を大事にできているのでしょう。情報があふれ、刺激が多い現代はスピードの速さが重要視される傾向にあります。誰もが「先へ先へ」と急ぎ、次の展開を予測する日々に「いま」はありません。

そんなとき、様々な〈いま〉の情景から、私たちにいまを生きる喜びといのちの尊さを教えてくれるのが、本書です。
詩に触れるだけでも、谷川さんのことばは胸に響きますが、岡本さんの味わい深い絵が、より「生と死」の美しさと切なさを強調させます。
「泣けるということ 笑えるということ 怒れるということ」という、マイナスとも捉えられる感情も、生きているからこそ。そう思うと、日常で起こるすべてが宝物のように感じられます。1冊を読み終える時、「生きているということ いま生きているということ」に続くことばが、すらすら出てくるようになっていることに気が付くことでしょう。(み)

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