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内容詳細

《「おばあちゃんがお手本にしてる人っている?」
「昔はたくさんお手本にしたい人がいたわ。……思っていたような人と違ってがっかりさせられたこともあるわね。最初のお手本はもちろん両親よ。そして、十歳になってすぐ少女団にはいると、アドルフ・ヒトラーがお手本になったの」
「ヒトラー? ヒトラーって大悪人でしょ? なぜヒトラーなの!?」
「子どもたちは、ヒトラーはドイツで一番えらい人だと教えられていたの。戦争が終わる数日前に、ラジオでヒトラーが死んだと聞いたとき、私は悲しくて泣いたわ。ヒトラーのいない世の中も、ヒトラーなしの人生も想像できなかった……」》

大戦下、ナチスの思想は都市・農村をとわず組織的に国中に浸透し、〈世界に冠たるドイツ〉の理想は少年少女をも熱狂させた。祖国の正義と勝利を疑わず、加害者でも被害者でもなく、しかし時代の狂気に翻弄され……
17歳で終戦を迎えた著者は、「軍国少女」から、戦後は価値の180度の転換を迫られた世代。「この時代の証言者はまもなくいなくなる。だからこそ、真実を若い人に語り伝えなければならないのです」――自らの体験や実際に見聞きしたエピソードから生まれた20の物語。