クリーンヒット ⚾ ノンフィクション
『自分ゴトとして考える難民問題 SDGs時代の向き合い方』
日下部尚徳 著
岩波書店 刊
2025年2月 発行
1089円(税込)
232ページ
対象:高校生から
「難民」という人はいません。そこにいるのは、私たちと同じ一人の人間なのです。
世界には1億2000万人も「難民」となった人たちがいるというニュースを耳にしたことはありませんか? けれど、あなたの周りには「難民」はいるでしょうか?
日本は難民の受け入れがとても少ないので、自分の知り合いに難民がいるという人は少ないと思います。身近にいなければ関心を持つことも難しいでしょう。関心を持たないから知ることもなく、知らなければ受け入れることもなく、受け入れなければ知ることもないーーこのような悪循環を断ち切るためにはどうしたらよいか、世界の重大関心事である難民を自分事として考えるために必要なことをステップを踏んで説いてくれるのがこの本です。そもそもなぜ難民が生まれるのか、難民とはどういう人たちで、どのような暮らしをしているのか、日本にも難民はいるのかなど、「難民」というニュースの言葉に実態を持たせ、一人一人が自分と同じ人間であることに気付かせるための丁寧な解説が7つの章を通して語られます。
特に4章以降は日本にいる難民を含めた外国籍の人たちが直面している問題について書かれており、遠いところの自分とはかかわりのない問題ではないことに気付かされます。ミャンマーの少数民族ロヒンギャとして迫害され12歳で日本にやって来たルリカさんは、中学校でひどいいじめを受けました。それは彼女が日本語がほとんどわからず、肌の色や生活習慣が日本人と違ったからです。十分なサポートもなく放り込まれた学校で、つらい目にあったルリカさんーー問題はルリカさん自身にあるのではなく、日本語のわからない12歳の少女に適切な支援を行わなかった私たちの社会にあるのではないか。そう視点を変えてみると、多くの難民「問題」は難民となってしまった人たちにあるのではなく、彼らを受け入れる社会にあるのかもしれないと気がつきます。それは難民だけでなく、日本に暮らす多くの外国籍の人たちが抱える困難にも当てはまりそうです。
個人のできることは小さく、世界の難民問題を解決することなどできません。けれど関心を持ってアンテナを張っていれば、必要な時に小さな行動に結びつけることはできるはずです。まずはこの本を読んでみること、それもあなたのできる第一歩ですし、身近な人と話すことも、映画や料理など興味を持った楽しいことから入るのもよいでしょう。一人一人の日々の行動と認識の変化が、今は難民に不寛容な日本社会を少しずつ変えていく力になっていくはずです。(か)
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