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『アンナの戦争 キンダートランスポートの少女の物語』
ヘレン・ピーターズ 作
尾崎愛子 訳
偕成社 刊
2023年9月 発行
定価1870円(税込)
350ページ
対象:小学校高学年から

キンダートランスポートでドイツからイギリスへわたり、戦争を生き抜いた少女アンナの物語

イギリスの児童文学賞、カーネギー賞ノミネート作品。

小学校6年生のダニエルは、学校の授業で第二次世界大戦のことを学ぶことになりました。そして、戦争の話を聞くためにおばあちゃんを訪ねます。すると、話す準備があるからと日を改めて来るよう言われました。ダニエルが日曜日におばあちゃんの家に行くと、たくさんの古い手紙と色あせたノートがテーブルに置いてありました。白黒の写真も。
そうして「これまで、子ども時代のことをちゃんと話したことはなかった」というおばあちゃんが、ダニエルに戦争中の驚くような物語を語り始めました。

第二次世界大戦中、12歳だったアンナはドイツでのユダヤ人迫害を逃れ「キンダートランスポート」(イギリス政府がユダヤ人の子どもに限りビザなしで入国を許可した活動のこと)でイギリスへ避難することになります。道中も、イギリスに無事に到着してからも一筋縄ではいかないことが次々に起こります(詳細はぜひ読んで! 書き出すと長くなってしまう~)。なかでもアンナが「本物のスパイ」として活躍(?)するさまはハラハラドキドキです。

ナチスのユダヤ人迫害や、キンダートランスポートなど史実を踏まえつつ、作者の想像力によって紡がれた本作は読みごたえたっぷり。戦争の悲惨さなども読み取れますが、12歳の女の子の視点で語られるので重くなりすぎずに読めます。オルレブの『走れ、走って逃げろ』(岩波書店)みたいなとでもいうのでしょうか。一種の冒険もの、といってもいいかもしれません。
現代の男の子との接点があり、戦争の記憶が遠くなってしまっている今、このようなアプローチは効果的。

表紙のまっすぐ前を向くアンナの表情も印象的で、よく内容を捕えていると思いました。 (す)

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