クリーンヒット⚾ 伝記
『伝記を読もう かこさとし 遊びと絵本で子どもの未来を』
鈴木愛一郎 文
あかね書房 刊
2021年3月 発行
定価1650円(税込)
141ページ
対象:小学校中学年から

子どもたちに大人気で、長く読み継がれる作品を生みだした原点に迫る!

惜しくも2018年にこの世を去られたかこさとし氏の生涯をまとめた1冊。『からすのパンやさん』『だるまちゃんとてんぐちゃん』『かわ』など今も多くの子どもから大人までを魅了する作品を生み出してきた作家です。早くも伝記が書かれる人になってしまったのかとの思いで、不思議な感覚になりました。まだまだ多くの作品を出版されるような気がしてならないからです。ほんとはどこかでお話を作っているんじゃないの? って。

貧しかった幼少期の逸話から、戦後のセツルメント活動のこと、絵本作家としての苦悩、等々。92歳で亡くなるまでの業績をコンパクトながら無理なくまとめています。写真などの資料も多く、視覚的にも楽しめます。巻末には「かこさとしをとりまく人びと」として辻惟雄氏、奈良俊幸氏、松居直氏、藤嶋昭氏の紹介、「さとしをもっと知ろう」として“お話の絵本”“科学絵本”などの紹介、そして年表が掲載されています。ここに掲載されているだけでは足らないほど。掲載されているのは、ごく一部です。

アイデア豊富で、仕事一筋だったかこさとし。戦争体験の反省をふまえ、子どものために生きようと誓った信念。絵本作家であると同時に、工学博士でもあった彼が作品を通して伝えたかったこと、作品にこめた願いとは何かがみえてきます。
9階のウェンライトホールで展覧会をさせていただいた時のことを思いだしました。講演会、サイン会の盛況ぶりは昨日のことのようにありありと蘇ってきます。あらためて子どもの本の世界での存在の大きさを感じました。(す)

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