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『海よ光れ!3.11被災者を励ました学校新聞』
田沢五月 文
国土社 刊
2023年1月30日 発行
定価1540円(税込)
160ページ
対象:小学校高学年から

余震の中作り続けた「学校新聞」―12年の歳月が今、私たちに教えてくれること

岩手県山田町は、陸中海岸の真ん中にある漁業のさかんな町です。
2011年3月11日、大津波はこの山田町ものみこみました。
高台にあった大沢小学校は避難所となり、しばらく孤立しましたが
地区の人々は混乱の中、力を合わせて困難に立ち向かいました。
その姿を目の当たりにした子どもたちは、自分たちに何ができるのか?
考えた末、「学校新聞」で地域の人々を励ますことを決めました。
その学校新聞のタイトルは「海よ光れ」
当時の子どもたちの様子を詳細に綴ったのがこの本です。

たかが「学校新聞」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、この本を読み進めていくと、その「学校新聞」が
どれほど地域の人々を励まし、支えていったのか
そして新聞を作った子どもたち自身にどれほど力を
与えてくれたか ーそのことが、よく伝わってきます。

本の中には、避難所で必死に作り続けた
学校新聞「海よ光れ」も掲載されています。

震災当時の地域の人々や子どもたちの様子を綴った
ドキュメンタリーも、さることながら
この子どもたちが作った「学校新聞」も読みごたえがあります。

残念ながら、大沢小学校は2020年3月で閉校となり、143年の歴史を
閉じることになりました。巻末にはコロナ禍の中、作られた最後の学校新聞
「海よ光れ」も掲載されています。

そして、もう一部、皆さんに読んでいただきたいのが挟み込みで
本に入れられている「号外 海よ光れ」です。
2011年、震災の中5年生6年生として「海よ光れ」を作り続けた
8人の子どもたち、今は23歳、24歳となっている彼らからの
メッセージが載っています。
タイトルは「号外 海よ光れ 三陸で育った大沢の子から読者の皆様へ」
大人になった彼らの言葉に、読んでいて胸が熱くなりました。

あの日から12年が経ちました。
町をのみこむ黒い津波と、変わり果てた故郷の姿を学校の高台から
見た子どもたちが、余震の中で作り続けた「学校新聞」
その時の思いをそれぞれがしっかりと心に刻み
12年を歩んでいることに、大人として襟を正される思いがしました。

本書には”もう一つの”「海よ光れ」のことも大切に書かれています。
それも合わせて読んでみてください。
読み終えた後に、前に進む力をきっとくれるはずです。(く)

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