かわいらしく楽しい絵本原画の中で異色の1枚があります。タイトルは“12032011”――9年前の東日本大震災、福島第一原発事故の後に描かれた作品です。圧倒的な迫力と存在感で見る者を震えさせるようなこの絵をどうして降矢さんが描かれたのか、この絵が私たちに問いかけるものは? 「あの絵の前から動くことができませんでした」と、私たちに真剣なまなざしでおっしゃったお客様の言葉がすべてを物語っています。今この時を日本に生きている私たちは、誰一人として原発事故と無関係ではないのです。

でもこの会場には実はもう一つ、降矢さんが描いた作品があります。タイトルは“希望の種”――「“12032011”は、絶望的な絵になりましたが、“希望の種”では、これからの希望を込めて描きました。」と降矢さんがコメントされている絵はどんな作品なのでしょうか。皆さんにはぜひ展覧会場でこの2つの作品を見、子どもたちに残す未来の像をそれぞれに思い描いていただきたいと願っています。