【たくさんのふしぎ40th】🤔(2021年4月号)
『ひと粒のチョコレートに』
佐藤清隆 文
Junaida 絵
福音館書店 刊
2023年10月5日 発行
40ページ
とろ~りチョコレート、くちどけの秘密
お菓子の王様と呼ばれるチョコレート。今のように私たちが気軽に口に入れるまでには長い年月がかかりました。その理由は一体何でしょうか?本書ではチョコレートの歴史や製造方法をわかりやすい説明と絵で余すことなく伝えています。
チョコレートの原料、カカオ豆は内部に「油」を蓄えています。カカオの成長にはこの油が不可欠です。カカオは暖かい地域原産のイメージがありましたが、それは気温が低いと油が固まって栄養にできず、芽を出すことができないから、なのだそうです。そしてこの油はおいしいチョコレートを作る上でも欠かせないものです。カカオの油は人の体温ほどに温めると溶け、25℃以下になると固まるという特殊な性質をもっています。固形のチョコレートを口に入れるととろけますが、その際チョコレートの成分として含まれている砂糖やミルクも同様に口の中に広がります。チョコレートの苦み、風味と砂糖の甘みが一緒に味わえるので、唯一無二のくちどけの良いお菓子として楽しまれているのです。
製造の過程で苦労もありました。チョコレートは主な原料であるカカオ豆を発酵、乾燥、焙煎させてすりつぶしたものに、砂糖やミルクを加え、冷やし固めることで出来上がります。その工程の一つ、すりつぶしたカカオ豆を冷やすという作業がとても重要なのですが、その塩梅がとても難しく、技術の発展が必要でした。また、ミルクチョコレートを作る場合は当然ミルクを加える必要がありますが、それにも工夫が必要でした。ミルクは水、チョコレートは油。水と油は分離してしまい、混ざらないからです…!こうした困難がありながらも人間は研究を重ね、なんと1万年近い時間をかけて今のチョコレートを完成させたというのですから、驚きます。
料理は科学。チョコレートの成分の説明は大人でもじっくりと腰を据えて読みたい内容ですが、著者は非常にわかりやすい言葉を使っているので、子どもでも理解ができます。さらに、言葉で伝えきれない内容をJunaida氏の絵が補っており、科学絵本の良さを実感します。一粒のチョコレートに人類のたゆまぬ努力をみる本書。あなたも一粒つまみながら、チョコレートの歴史に触れてみませんか?(ほ)
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