【たくさんのふしぎ40th】🤔 (2020年6月号)
『まぼろし色のモンシロチョウ 翅にかくされた進化のなぞ』
小原嘉明 文
石森愛彦 絵
福音館書店 刊
2025年4月5日 発行
1430円(税込)
40ページ

身近なモンシロチョウの進化の謎にせまる

私たちにとって最も身近なチョウといえば、白い翅がかわいらしい「モンシロチョウ」です。あまりに身近な存在なので、その存在に疑問を抱いたことはありませんでしたが、この白い翅は実は不思議な色をしており、それがこのチョウの進化の歴史に関わっていることが分かっています。

モンシロチョウの外見はオス、メスの区別がつきません。しかし、モンシロチョウのオスは交尾の際に迷わずメスの方へと向かいます。オスにはメスと他のオスとの区別がついているのです。これに疑問をもった本書の著者は翅の色に注目しました。そして、私たち人間にはすべて「白」にしかみえていない翅の色ですが、メスの翅は「紫外色」だったことを突き止めたのです。紫外色というのは人間の見える紫色の外にある色のこと。人間は七色(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)を認識することができますが、そこから外れた色も存在し、紫外色はそのうちの一つです。研究の際は紫外色を映すことのできる特殊なフィルターを通して撮影を行い、モンシロチョウのメスの翅が紫外色であることを確認していますが、実際にどのような色をしているのか、私たちは目で見て知ることはできません。まさに「まぼろし色」というわけです。しかし、モンシロチョウの秘密はこれで終わりではありません。これまでの研究対象になっていたのは、日本の関東地域に生息するモンシロチョウです。そのほかの地域に生息するモンシロチョウのメスは紫外色の翅をもっているのでしょうか?ちょっとだけその疑問にお答えしますと、遠いイギリス、ケンブリッジのモンシロチョウはまぼろし色をしていないことがわかりました。ということは、世界にはまぼろし色をしたモンシロチョウと、していないモンシロチョウがいるのです!では、ケンブリッジと関東以外の国と地域は?そしてなぜ、地域によって翅の色に違いがあるのでしょう?その答えは本書を読んでご確認いただきたいと思います。

生き物の進化は、偶然と必然が絡まり合って進んでいくのだと本書から学びました。雌雄の区別がつきやすいということは、それだけ交尾のチャンスが増える、つまりより多くの子孫を残せるということ。これは種の繁栄にとって大きな問題ですから、当然交尾に有利な条件を持つ個体が生き残り、繁栄します。しかしそんな大きな影響を与えるまぼろし色のチョウの誕生は生息範囲を広げる過程で起こった突然変異だそうです。

まぼろし色の秘密を解き明かした著者は、次の疑問としてチョウの翅の「斑紋」に注目しています。モンシロチョウの翅の背面(表)についている黒い模様ですが、これは個体によって色の薄さや大きさ、さらには個数も様々なのだそうです。そこには何か理由があるのでしょうか?こんなに身近なチョウにもまだまだわからないことがあるのですから、生き物っておもしろい!ですね。(ほ)

★ご注文、お問い合わせはお電話、Fax、メールにて承ります★
売場直通電話 03-3563-0730
Fax 03-3561-7350
メールでのお問い合わせは下記のフォームからどうぞ。

お問い合わせフォームへ