【たくさんのふしぎ40th】🤔 (2022年7月号)
『ホタルの光をつなぐもの』
福岡伸一 文
五十嵐大介 絵
福音館書店 刊
2025年3月15日 発行
1430円(税込)
40ページ

小さなホタルから大いなる自然の力を考える

みなさんは今年の夏、ホタルを見ましたか?私が子どもの頃は近所にホタルで有名な公園がありましたが、最近はそこでもホタルは見られなくなっています。ホタルはきれいな水のあるところに生息するといわれています。それは川の栄養分と酸素が、ホタルの幼虫が主食とする貝の成長に欠かせないからです。では、ホタルに必要なのはきれいな水と貝だけなのでしょうか。本書では生物学者である著者福岡伸一さんが身近な「ホタル」を入口に、自然の力そして生命の繋がりについて語りかけるように記しています。

ホタルに必要なもの。それは太陽の光と土です。幼虫の主食である貝は主に「藻」を食べて生きています。その「藻」に必要なのが太陽の光です。また、ホタルは幼虫の間は水中で生活し、土の中でさなぎになります。羽化してホタルになるためにはやわらかな土のある土手が必要です。ということは、ホタルに必要なのは栄養分のあるきれいな水と貝、藻、光、土。つまり自然そのものです。近年、人間の都市開発によってホタルに必要な土手や水辺は埋め立てられ、川はせき止められ、森林は伐採されています。悲しいことです。一方で自然には失われたものを取り戻そうとする回復力があります。アスファルトのすき間から芽を出す植物を見たことはありませんか。また、水もいつまでも埋められ、せき止められたままではいられず、そこにあるものを崩していく力があります。水の流れが戻れば植物はさらに成長します。植物を食べる生き物を呼び、その生き物は捕食者を呼びます。落ち葉や排泄物はよい土になります。すべてものは繋がっており、繋がろうとする力があることに感動します。しかし残念ながら、この自然の回復は一朝一夕でなせるものではありません。自然がバランスを取り戻すためには果てしない時間がかかってしまうことを忘れてはなりません。

人間が地球に生まれたのはほんの20万年前ですが、ホタルが生まれたのはなんと1億年前というのですから驚きです。途方もない時間をかけてホタルの光が今に続いていると思うと、人間の身勝手さでその光を絶やしてはいけないと強く思うのです。(ほ)

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